第9話・「シャーベットを救え!この町を救え!!あれ?姫はどうしたんだよ!?」


陸に上がった海賊どもを退治するため、一行はプディングの実家たる宿屋にて
作戦会議をひらいていた。
クラムが鬼神術法の式神を使って、ポタージュは妖精花法を使って、海賊達の情報を収集した。
「どーにも、海賊どもはー、何か、仲間割れしてるよ?」
クラムは帰ってきた式神を手に乗せて撫でながら言う。
「荒らしているのは、本当に荒くれた人ばかりみたいだわ。
でも、それに反対している海賊が、何人かいるのね。」
ポタージュも妖精をきらきらと舞わせながら言う。
「便利だなー。なら、反発派の方にコンタクトとってみる?」
アールグレイの意見。
「・・・そうだな、上手く近づくことが出来たらいいかも知れない。」
ガナッシュは賛成する。
「でも、騎士が近付くのは、いい顔しないんじゃないですか?」
と、プレッツエル。
「変装でもしますか?」
と、ロゼ。
「・・・何に変装すんの??」
アールグレイが怪訝な顔をする。なんとなく、ロゼが何か言うと反発する彼である。
「軍人に見えないように、ですよ。警戒されないように、です。
そうですね、我々はこのままだと、どのみちここでは目立ちすぎます。
軍装をときましょう。何名かで町人を装って近付くというのはどうです?」
「そうだな・・・では、俺とアールグレイはペンダントの剣がある。何かあっても対応できる。
あとは、魔法を使える人員で・・・。」
ガナッシュが賛同する。
「決まりだね。僕は同行させてもらうよ。」
心に婚約者の安否でいっぱいのカフェラーテ、早く面倒事を片付けて、ヨーグル島へ行きたい。
そのためには、海賊たちの暴行を止めることが必死だと。
船が出なければ、どうにもならない。
「オレも行くぜ!剣はダガー持ってく。ここはオレの故郷だからな!」
「プリンちゃん、僕も行くよ。」
「来なくていいっ!くっつくなっ!!」
ラズベリー、何かとプディングの緊張をほどく・・・。


「何だか女装してる気分だ・・・。」
ガナッシュ、その姿は美しい町娘。
「・・・・・可愛いかも・・・。」
アールグレイはガナッシュの、はじめて見る女性としての姿に見とれていた。
「お美しいです。ガナッシュ殿・・・。いや、ショコラさんとお呼びしましょう!」
同じく不本意な女性の服装をしているロゼが、ガナッシュの手を取って瞳を輝かせる。
「博士も綺麗じゃん。ヘンな女の人だと思ってたけど、美人さんだったんじゃん。」
髪が派手すぎるという理由で、お留守番組になったクラムが、へー。という顔で言う。
「全く、私までこのような格好をする必要が何処に・・・。」
極めて不本意なり、とロゼは不服そうな顔をする。
「いいえ、ロゼ博士、やっぱり貴女はお美しいですよ・・・!生きてて良かった〜!」
率直にそう言うプレッツエル。
「それじゃあ、プレッツエルはロゼ博士の恋人・・・うーん、連れ添いってことにしましょ!
ああ・・・私、こういう可愛らしい素朴なお洋服も好きだわ・・・。
お姉様とペアルックとか出来たら、どんなに素敵かしら・・・。」
ミントはちょっぴり浮かれていた。
「つ、連れ添い・・・。」
若干興奮気味に、町人姿のプレッツエルは幸せそうにしている。
「準備が出来たなら早く行くよ!!」
いつも急かす役の、カフェラーテ。



一方、こちらはカリー国。
カリーの若き将軍、カスタードは、いつまでも帰らない二人の王子の行方を追うために、
シチュードバーグへ向かう任をおびたところであった。
「お二人は、どうなさったことか。シチュードバーグに向かったのならば、
またなにやら長居をされておられるのだろうか。
隣国は今、国王陛下が不在の筈。
何かあったとすれば、アプリコット王女だろうか。いずれにせよ、面倒が無ければよいが。」
シチュードバーグの王女は騒がしい。カリーの王子も騒がしい。
長くした白金の髪をなびかせた美男子将軍は、生真面目な瞳に、若干の苦笑い。
・・・そんなことは梅雨とも知らぬ、シチュードバーグの大臣ジンジャー。
国王は帰路についている。隣国からは使者が来る。



(くっ・・・もう少しで切れそうだってのに・・・。まったく、野郎、どうしてやろうか。)
猿ぐつわに手足の拘束。
人知れぬ一室の、薄暗いその場所に、一人の少年がいた。
少年は、まるで美しい少女と見まごう、白い肌をしていた。
この少年こそ、カラメルを陥れたとされている、海賊の大将シャーベットであった。
シャーベット2世。
北海を根城にしている、海賊の頭。
だが、代替わりしていることはほとんど知られて居らず、母となって足を洗った一代目
女海賊シャーベットに拾われて育った、その少年は
こんな子供に率いられることに不満を持つ多くの荒くれ達に監禁されていた。



「海賊というから、どんな奴らかと思ってたぜ。」
町人姿で海賊に近付くことに成功したアールグレイ達。
そんな感想をもらしたのは、プディングだった。
「兄ちゃんに綺麗な姉ちゃんよ、勇気あんなぁ。家ン中引っ込んで何にも出来ねぇ
そんな中におめーらみてぇなんがいたとはなあ。」
海賊というには人の良さそうな男が言った。
「・・・いつまでもこんな状態じゃいられないから。
それにしても、驚いた。あなた達は信頼して良さそうだ。」
海賊達の視線を邪魔に感じながら、ガナッシュは言った。
「俺等のよぉ、大将はな、こんなひでぇことする人じゃーねえんだよ。」
海賊のひとりが言う。
「何か理由がありそうですね。この惨事をどうにかしたいのです。
私達に話してはくれませんか。」
同じく視線が鬱陶しいロゼが言う。
「ああー、そうだな・・・。いいだろう。勇気あるおめえらに敬意を表そうか。」
数人の海賊達の中で、「兄貴」と呼ばれている男が、目を光らせながら言う。
「そのかわり、おめえらの正体もあかしてもらおうか。」
・・・・・!!
一同は一瞬の緊迫感を走らせる。
「何だ、見る目があるね。」
ひとりあっさりとした表情のラズベリー。
「何??変装の意味全くなしなの??」
ミントは大きな瞳をさらに開いて驚いた。
「ばれているなら仕方ない。聞かなくても大体わかっている様だ、話してくれるか。」
いつもの凛々しい表情に戻して、ガナッシュは言った。
「いいだろう。うちの頭は今、満ち潮には沈む小屋の地下に閉じこめられてる。
知られているシャーベットってぇ女海賊はな、もう引退してな。
今は俺等の坊ちゃんが跡を継いだ。
でもな、俺等の兄弟達の多くは納得しなかった。
坊ちゃんはまだ年端のいかねえ子供だ。それでも俺等をまとめる力ぁ持ってる。
・・・それでも俺等は分裂した。
まあ、仕方ねえったら仕方ねえ話だ。
今町を荒らしてるのは、先代の名汚して好き放題やってる、かつての兄弟達よ。
しかも、領主と手ェ組んでやがるのさ。」
その話に、騎士一同、厳しい顔を見せる。
「ここの領主・・・おかしいとは思っていた。こんなに荒れていながら、何もしないとは
どうしたことかと。この地方の領主は・・・」
ガナッシュは厳しい瞳で、憤りを感じている様だった。
「ポークフランク侯爵ですね。なるほど、話が通ってきました。」
ロゼはため息をつきながら言う。
「領主、何かの欲にでもかられたのか?」
アールグレイも久しぶりに騎士らしい面持ち。
「侯爵だか何だか知らねェが、領主が民を救わねえどころか、荒らすのに手ェ貸してるだって!?」
憤慨するプディング。
「・・・さあ、あんたらの話の番だ。何者だ、お前等は。」
兄貴と呼ばれる男は言った。
「我々は、シチュードバーグの騎士団だ。」
プレッツエルがそう言うと、海賊達は一斉にざわめく。
だが、兄貴と呼ばれる男だけは、納得、といった顔をした。
「ほう。やっぱりそこら辺か。お前等は目がな、違うんだよ。
兄弟達よ、いい味方が出来たぞ。
これで、侯爵に一矢報いてやれるってもんだろうよ!」
「お、おおー!」
「ウイスキーの兄貴!」
「これで坊ちゃんも助けられる・・・!!」
少数の海賊達は、ウイスキーという、その男の声に、歓喜した。



一同、変装は何だったのかと言いながら、騎士の姿に戻っていた。
「少なくとも、このままではウイスキーという男もすんなり通すまい。」
と、なんとかフォローしてくれたのは、グラッセだった。
「可愛かったのになー・・・。」
「そうですよねえ・・・。」
残念そうな男がふたり。
「何とか満ち潮の前に、まずシャーベットを助け出さないと。
期限は明日なんだろう?」
カフェラーテが言う。
「私達は、侯爵の方へ行くわ。上手くやるから心配しないでね。
ミント様、御身は私達がお守り致します。どうかよろしくお願い致します。」
カシューは、そう言ってひざまづく。
「わかっているわ。職務怠慢は私が絶対許さなくてよ!
領主が民を苦しめて私腹を肥やすなんて、絶対許さないから!!」
「しかし驚いたな。姫様がおられたとはな。姫様にグラッセさんにカシューさんよ、たっぷり領主をこらしめてくれよ。」
「もちろんよ!荒っぽいお仕事は、そちらにお任せするわ。
どうか、小屋が沈む前に、シャーベットを救い出してね。」
妙に息の合うミントと海賊。
「連絡は、私とカシューの、この魔法の道具・・・名前を付けたいところですけど・・・
これで通話して行います。
どうです?案外私も役に立つでしょう。」
ロゼは得意気。
「そうだな、博士が居てくれてよかったよな。」
アールグレイは、意外だけどな、と思いつつも、ロゼを見直していた様だった。



「魔界ってのは、どうなってやがる。おいミーソ、黙り決め込んでんじゃねえよ。」
魔界をさまようアプリコット。
その、薄暗く道もない荒野を、人質ひとり連れて、やみくもと言えなくはない
足取りでただ、進む。
恐ろしい魔気を帯びた王女は、天性の感なのか、ヨーグル島へ繋がるその場所へ、
少しずつ近付いていた・・・。



つづく。


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05 9/17更新。


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