第4話 「シチュードバーグ騎士団2大女顔人気者騎士様。ご苦労様です。」

なにやらやっと名前が明かされました、ここはシチュードバーグ王国の王の間。
けして今まで名前がなかった訳ではありません。ええ、けして。
繰り返し申し上げます。こちらシチュードバーグ王国の王の間。
そこで、大臣ジンジャーは頭を抱えてうろたえている。
「あああ、全くどうしたものじゃ。カフェラーテ王子までもが行ってしまわれた。
このような時に、陛下がお帰りになられたらどうしたら・・・」
右に左にうろうろうろうろ。
それを見ているのは、シチュードバーグ騎士団の大将軍、グリンティ。
「ジンジャー卿・・・お気持ちは大変察するが、ここは落ち着かねばなるまい・・・」
グリンティ将軍は、威厳あるその面持ちに、若干の哀れみを浮かべつつ、
ただただうろたえる大臣に落ち着くように言う。
「グリンティ殿・・・しかしな・・・」
大臣、もう汗だらけ。グリンティは、ちょっと情けないとも思っていた。
「・・・不肖の息子も、役に立たぬ。あれは、ガナッシュがいないと何も出来ぬ。
何をしておるのか、アールグレイは。」
アールグレイは大将軍の息子だったりするのだった。
そこへ、一兵士が入ってきて申し立てる。
「申し上げます。隣国カリーより、ラズベリー王子が参られました。」
「ななな、なぬぅ!?」
大臣、おもむろに目を飛び出させて、ますますおろおろする。
大臣の許しもなにも、その王子様はその場へ入ってきた。
「やあ〜。元気かな?うーん、元気そうじゃないね?まあいいけど。
先日弟がこちらへ来たと思うのだけど、どうしたかなぁ〜??
まーさか、アプリンと仲良くしちゃって帰ってこないのかと、心配しちゃってるんだけどなぁ〜。」
・・・妙なノリのこの王子は、カフェラーテの兄である。
「仲良く何日も何してるのかなー??あんなこととかしてるんじゃないだろうね?」
「王子、カフェラーテ王子は・・・その・・・ですね・・」
大臣はもう、どうしたらよいやら、暗黙で、グリンティに助けを求めている。
なにせ、この妙な兄王子、何だかよくわからない人物だが、頭は切れるし察しも良い。
悪巧みも面倒ごとも、首を突っ込むのが大好きである。
そのわりに最前列にはけして出ないタイプだが。
この王子に事が知れたらもう、面倒が倍になるのではと、大臣はその思考で焦りいっぱいである。
「はやや・・・ええとそのですな・・・・・」
「何?問いつめていい?」
普通聞かないだろうというその台詞に、横で密かに苦笑するグリンティ。
「いや、問いつめられるのは困ります・・・」
大臣、汗がますますだーらだら。
「じゃあ、僕が問いつめる前に、事の真相はっきりと教えてね。さあプリーズ。」
大臣はこの王子には、それはもう弱いのだった・・・。
言う前から、何かもう知っていて、聞いてくるかのような、その言葉。
ラズベリーは、くだけた言葉で、しっかりと何が起きているか、確かめに来たのだ。
・・・興味本位で。
大臣はもう、かなわんとばかりに話し出す。
「へーえ。あのアプリンがさらわれちゃったんだ・・・。それじゃあカフェが帰ってくるわけないわけだ。」
「はぁ・・・まことに申し訳御座いません・・・。」
すでに情けないことしきりの大臣。
何も言わないグリンティ。このラズベリー王子は止められないと、ある意味はなから諦めている。
何事かが起きている。ならばこの、ミドルセージの称号と一流の魔道剣士としての力を持つこの王子にも、動いて貰うのは面白い。
そんなことを考えているグリンティだった。
「わーかった。じゃあ、僕もちょっと行ってみるから、お供ひとり頂戴ね。指名付きで。」
「はい・・・誰をご指名で。」
「愛しのプディングちゃんを。決まってるだろう?ふふ。」
微妙な笑みを浮かべて、騎士プディングを指名するラズベリー王子。
「は、はい。では、グリンティ殿、騎士プディングは・・・」
すっかりもう、情けない顔で、妙に安堵してるようでもある大臣。
「プディングは、騎士団でも二番手の剣の使い手。安心して護衛に付けるに宜しいでしょう。承知致しました。」
・・・そして、アールグレイに次ぐ剣士、騎士プディングは呼ばれた。
「騎士プディング参りました。」
そこに、ブロンドの、可愛らしいくらいの少年騎士がいた。
「やーあ、プリンちゃん!久しぶりだね。」
ラズベリーの嬉しそうな声。その声に、おもむろに嫌な顔をする、そのプディング。
この、ラズベリー王子には、そういう趣味もあるようで・・・。
「これは、隣国のラズベリー様。・・・ええと。」
プディングは言葉が出ない。プディングが、田舎の母ちゃんと並べて、
嫌いじゃないけど出来れば会いたくない人間ナンバーワンの、
このラズベリー王子を前にして、挨拶をせねばと思うはすれど。
「そーんなに嫌な顔しなくたって。まあ、そんなとこもカワイイけどね〜。」
そんなことを堂々と王の間で、ウィンク飛ばしながら言うラズベリー。
ゴホン、と咳払いをして、グリンティは、プディングに護衛の命を下した。
もっの凄く嫌な顔をするプディング。だが、命令は命令。
「承知致しました。・・・はぁ
小さくため息をついて、プディングは、王子に一礼し、準備にかかったのだった。


そしてこちらは、魔法研究所。
ゼリーがひとり帰ってきて、この一連の事を研究所のとある人員に話していた。
「はあ、それはたいへんだね。」
声変わりの途中のような声で、そう言ったのは、研究所に雇われている
特殊部隊の一員、鬼神法術の使い手、クラム・チャウダーという少年だ。
「それはもう、こんなのんびりしていちゃ、駄目じゃないの?」
そう、可憐な小鳥のさえずりの様な声の主は、クラム・チャウダーの相棒、
妖精花法の使い手、ポタージュだ。
その他にも、剣士マロン・グラッセ、女騎士カシュー・ナッツといった面々が居た。
「魔界は何をたくらんでいるのだろうなあ。どっちにしろ、僕らは行かなきゃだよね?
へへっ、正直わくわくするなー。楽しみだ。」
クラム・チャウダーは、独特のカラーリングした銀髪を指で遊ばせて、
やんちゃな子供みたいに楽しそうにしている。
「遊びじゃないのよ、クラム。」
相棒ポタージュにツンとつつかれて、クラムはなお悪戯っぽく笑っていた。
「しかし、あのアプリコット姫様が・・・。」
そう、言葉を零すように言ったのは、グラッセ。
「信じられないくらい、恐ろしい相手かもしれないわね。アプリコット姫様は、
この魔法研究所の人員全員かかっても傷一つつけられない、そんなお人だわ。
それが・・・あっさり囚われるなんて、私には信じられない。」
騎士カシュー、冷や汗を流しながら言う。
「ねえ、行くんでしょ?僕達が助けに行かなかったら、心もたない騎士の二人や三人、
ヤバイでしょ?ねえ、行こうよ〜。」
「こーら、遠足に行くんじゃないのよ、クラムったら。」
クラムとポタージュのやりとり。クラムは心底楽しそうである。
研究所だなんて場所に缶詰で、心底退屈していたクラムは、気分的には遠足の前の子供と一緒。
「まあ待ちなさい、ここの守備もしっかりしておかないと、お留守には出来ないから。」
カシューはそう言って、部屋を出ていった。



「何よ、何かもめてるわけ?でも、隙を見て、頂ける物は頂いてしまわないとね。」
騎士達の金品を狙って後をつけていた盗賊パエリアは、アールグレイ達一行の隙を狙う。
そのアールグレイ達は、謎の少年に足止めされている。
「君はなんなんだ、・・・その耳、エルフ、いや、魔族か!?」
ものを疑う様な目で、ロゼはその少年を見る。
「はい、僕は魔族です。・・・お願いします。魔界へ行くのはやめてください。」
さっきまでは必死そうだったその魔族の少年、途端に落ち着いてそう言う。
「どういうことだ?君は何者だ?」
ガナッシュが聞く。
「・・・・・僕は、魔界王の弟、ブレッドといいます。」
「魔界の・・・王弟!!?」
そう口にしたのはロゼだったが、一同、驚きは隠せない。
カルボナーラを除いて。
「魔界はあなた達にとってはとても危険。そして、貴女、ミント姫、貴女は行ってはいけない。」
真剣な眼差しで語るブレッド。
「わ、私をミントと、どうして・・・。」
「貴女はシュ・・・」
そう、ブレッドが言ったところで、さっきから様子をうかがっていたあの女盗賊が
一行の荷物にこっそり手をつけたことにガナッシュが気付いた。
「!この泥棒!!」
「あ〜、気付かれちゃった。」
そう言って逃げようとしたパエリアだったが。
「あれえ??どっかで見た顔だと思ったけど、もしかしてショコラじゃないのアンタ。」
そう、ガナッシュに向かって言った。
「・・・パエリア?」
ガナッシュはそう、目の前の女盗賊に向かって言う。
「やっぱりショコラだ。やだー、久しぶり。やーねえ、もう。」
同窓会の様なノリでしゃべるパエリアに、のせられかけたガナッシュは、いまさらな言葉を発した。
「いや・・・人違いです、すみません。」
「何言ってんのショコラ。」
「・・・・・。」
しばしの沈黙。
それを破ったのはアールグレイだった。
「ねえ、もしかして、君はかつてのアイドルパエリアちゃんじゃ・・・」
「あら、よくわかったわね。そうよ、今やこんな、墜ちた天使だけれどねー。
やー、久しぶり、嬉しいわ。ショコラには会えるし、君、アタシのファンだった?」
調子のいいかつてのアイドル。
ガナッシュは、なんともいえない複雑な表情を浮かべていた。
「あのー・・・」
ひとりブレッドが置いて行かれていた。


つづく
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
長くなって参りました。
大分盛り込みどころへらして、こんな中途半端で切れてます、すいません。
キャラも沢山登場しましたねー。
今回は何かノリがよくなくてイマイチだなあ。
続きます。

もどる
 つづきへ