第2話 パーティ結成!ひと悶着?! 彩川りんな作
アルヴィがジョニーと出会ってから、森の道を進むこと、一時間と少し。
その間、比較的手に負えないことはない魔物と戦うこと、5回ほど。
ジョニーの魔法に助けられて、とはいえジョニーの魔法もへろへろ火の玉しか出てこないが、それでも一人より二人ではある、なんとか切り抜けていた。
「あ〜、もうちょっと戦ったらレベルアップするかも!二人いると効率もアップするね!」
アルヴィ、上機嫌で、レベル2を目指そうと意気揚々。
「じょにー様のおかげさまさまだろ〜、レベル2とか弱すぎだなアルヴィは」
ジョニー、上から目線でえっへんと自慢気。
「悪かったな、僕はこれから強くなるの!ジョニーだってさっきから火の魔法しか使ってないじゃん」
「むー、バカにすんなレベル1、じょにーさまはレベル3あるもん!」
子供の口げんかを繰り広げている、ファイアー以外に覚えてないのか聞いてみると、眠りの魔法は使えるとの返答が返った、何で便利そうなのに使わないのさ?と聞いてみれば、めんどくさいと返ってきた。
「もー、じょにーのMPなくなるから、ちょっとMPキャンディ食べる」
と、ジョニーは自分の持ち物カバンを開く。服装もだが、カバンもおよそ男の子のものに見えない可愛いものである、しかも見た感じ、手触り良さ気なレザーである、アルヴィのカバンはザックリした布かばんだが。
ジョニーって、いいとこのお坊ちゃんか何かなのかなあ?っていうか何でこんなひらひらなんだろ?
先程気になって聞いてみたら、可愛いは正義だと返ってきた、実際ジョニーに女装の趣味はない、だが可愛い色や服が好きだという単純な趣味だった。
ジョニーはカバンの中をゴソゴソとキャンディ探しをする、残りのひとつらしい。
ゴソゴソしながら、ひらりとハンカチが落ちる、つるつるした綺麗なハンカチが。
アルヴィはハンカチを拾い、ハンカチの文字刺繍や絹のような気がするつるつるに感動していた。
すごいなあ、刺繍で字が縫ってあるなんて、っいうか持ち物が女子なんだけど・・・と再び呆れたり感心したり。
えーと、じょるてぃーの?あれくさんどる?
文字刺繍をなんとか読む、何か凄そうな名前のようなものが縫われている。
「なーにー、ハンカチが珍しいのー、ってか町に着いたらキャンディ買ってよね」
「え、僕が買うの?っていうかさ、これ何の名前?」
「あ~、うーんと、ブランド名?お母様がくれたハンカチだから、ジョニー知らなぁい」
と言うジョニーの目は何故か浮いていた。
とかなんとかしていたら、6度目の魔物戦闘タイムになる、森の道もここまで歩くと魔物も変わってきたらしい、蛇の魔物やら、蜘蛛の魔物やら、なんとなく嫌な感じである
「なんか面倒なヤツだったら困るな、ジョニー、眠りの魔法使ったらいいんじゃない?!」
「えー、めんどくさいな、あれうまくできないからきらい」
「苦手なのかよッ!」
そう言われてはジョニーの気位に障るというもので、渋々、蛇の魔物のニョロニョロした動きから逃げながら、ジョニーは苦手な眠りの魔法を唱えた
「やった!寝た!出来るんじゃん!」
「うっさいぞアルヴィ、寝たから逃げよ」
逃げるのかよッ!とツッコミたくなったが、眠らせたうちに逃げるのも作戦的にはアリかと、逃げてみるが
新手が出た!
片方は寝てるとはいえ挟み撃ちの状態である、ピンチだ。大ネズミが三匹も追加され、窮地に陥った
起きてるのからやるよ、とアルヴィは剣を持ち直して、大ネズミ一体に攻撃を仕掛け始めた
だが、一撃では倒せないのはレベル1の辛いところか
観念したのか、ジョニーがファイアーを次々放つ、さっきよりへろへろでもないような、気がする
大ネズミは、倒れていくが、仲間を呼ぶ類いの魔物だったようで、またしても大ネズミは増えた
更に、背後に寝ていた蜘蛛の魔物が眠りから覚めてしまった!
蜘蛛の魔物は、糸を吐き、ジョニーが絡め取られてしまった
「わぁ、やだー!アルヴィどーにかして!」
「ジョニー!」
蛇の魔物が眠りから覚めた
蛇の尾が、アルヴィに襲いかかり、アルヴィはすっ転んだ
や、やっばー!
絶体絶命のピンチとは、このことかと、レベル1と3に多勢に無勢じゃないの、と
子供二人は、流石にどうにもならなくて真っ青だった
目の前が突然変わる
「大丈夫か!」
という男性の声がして、目の前の蛇と蜘蛛がバッサリやられて、開けたのである!
「なんかラッキー!ファイアー!」
「仕返しだアッ!」
大ネズミに向かいファイアーと斬撃が、アルヴィの剣とジョニーの魔法がダブルで食らわされ、その場にワラワラいた魔物はいなくなった
「ふええぇ」
ジョニー、脱力してへなへなと座り込む
「な、んとか、なったあ・・・」
アルヴィはレベルが上がった!
「大丈夫かい」
優しげなお兄さんの声、先程窮地を助けてくれた男性の声だ
誰なのか気にしている余裕もなかったが、ようやく男性の姿を見た
背の高い、緑の髪に紫色の瞳をした、旅人らしきお兄さんが、心配そうに二人を見ていた
「あ、ありがとうございました」
アルヴィは、立ち上がってお兄さんにお礼を言う
ジョニーも立ち上がって、服をポンポンと払った
「こんな所で、子供だけでいたら危ないぞ?家まで送ろう、町はすぐだから」
お兄さんはそう言って、近くなっていたらしい、向かっていた次の町を指す。
旅をしていると告げると、お兄さんはええ?!という顔をする
「どのみち危ないなあ、夕方だから魔物も凶暴さを増すんだよ、夜になる前にクルブの町に行こう」
お兄さんは全力で心配しているらしい
無理もない
「クルブの町、すぐそこまで来てたんだ、夢中過ぎてわかんなくなってた、あの、僕達クルブに行きたかったんだ」
「うん、日が暮れる、あとは歩きながら話そう、俺はルーファス、君たち名前は」
ルーファスと名乗るお兄さんは、二人が思ったよりタフで、元気なのにホッとしていた
「僕はアルヴィ、こっちはジョニーです」
「こっちってなにさアルヴィ、敬意のかけらがないぞー、まあ、助かったのは一応お礼言っとくけど〜」
「あんなへなへなしてたヤツがよく言うよ、ルーファスさんが通りかかってくれなかったら不味かったよ」
もう、元気に口げんかしていると、ルーファスは笑った。
クルブの町まで歩きながら、多少の情報交換をする、ルーファスは旅人で、クルブから別方向に向かおうと思っていたが、そこにお子様二人が大変なことになっている場面に遭遇したらしい
引き返していいのかとアルヴィは言うが、当て所の無い一人旅だから問題ないよとルーファスは笑っている
アルヴィも、一人旅の中でジョニーに会ったこと、強くなる旅をしていると伝えた
そこで、ジョニーは何で一人旅をしているのか、知らないと気付いた
「じょにーも、あてどない一人旅だから〜、まあ気にすんな〜」
そう言って、ジョニーはさっきから倒してきた魔物のぶんのゴールドを数えている
大したことないなあとか言っている
「あ、結構たまったね、これなら、宿代と、薬草くらいは買えるね!」
「MPキャンディ忘れないでよね、10個で許してあげる」
「ええー、いいとこ3個くらいだろ!」
そんなやり取りに、ルーファスは冷や汗しながら笑っていた
「無邪気だなあ、ほら、クルブに到着だよ」
やったー!とアルヴィ、お腹空いたとこぼすのはジョニー。
小さな町だが、それなりの施設はあるようで、まずは宿屋を取ることにした、ルーファスは、子供だけよりは自分もいたほうが、宿の方も安心するからと、一緒に取ることを勧めてくれた
「あのさあ、恩義は買うけど〜、知らないひとについて行ったらいけませんって、お母様に言われたんだけど、あんた信頼していいの」
ジョニーが突然、真面目な顔をして言い出す
アルヴィは失礼だよ!とたしなめる
「あー、まあ、ジョニーは正しい、疑いも大切だしもっともだよ、俺は君たちを助けたいとは思うけど、悪意はないから安心してほしい」
「もう、助けてもらって、ここまで歩いてきたらわかるじゃんか!ルーファスさんはいい人だよ、悪い人は目がくもってるんだぞ、ルーファスさんの目はいい人の優しい目だろ」
ルーファスは、旅する上で、その猜疑心も信じる目も、大切だと言った
「猜疑心かあ、でもルーファスさんはいい人だよ、悪いものをなんにも感じないでしょ?」
「まあ、そんならいいけどぉ、どこまで一緒さ?」
とりあえず、宿には一緒に行くと、それからは宿で話そうと、大人の余裕を見せてくる、ルーファスにしてみれば、こんな危なっかしい子供だけ、これ以上歩かせていいのかと、大人の心配をしていた。
クルブの宿屋に着く、部屋をとり、ほっと一息。
「ルーファスさん、宿代・・・」
「いいよ、それくらい俺が持つから。君たちは今後の支度も色々あるだろ、そっちにあてがえばいいさ」
「気前いいじゃん、じゃあキャンディ10個にあてよう」
「ちゃんと計算して買わないと、後々痛い目みるからな、薬草、毒消し、あと食費もな?」
といった会話をしながら、食事を取る。ルーファスの話も聞きたいが、アルヴィはジョニーにも色々聞きたかった、実にジョニーは変なヤツである、素性が知れないのはジョニーも同じである
ジョニーは、質素な宿の食事を口に運びつつ、イマイチだとか言っていた
「ジョニーはさ、どこから来てどこに行きたいわけ?」
「んー、どこでもいいじゃん、アルマリートとかサンスウィータとか宿屋高級そうでいいかも」
方角バラッバラだなあと、目的地もないのかと、首を傾げるアルヴィ
ジョニーは、ルーファスはどこから来たのかと返す
「俺か?まあ、随分歩いたけど、グラスネイドの王都から来たよ、二人は?」
「僕は、森の反対側のちっちゃい村から、旅立ったばっかりだから、あは」
「じゃあ、引き返せなくはないなあ」
帰らないよ、とアルヴィ。
「僕ね、強くなりたいんだ、勇者になりたいんだ!」
「勇者?!」
「ゆーしゃ?」
ダブルで聞き返されて、アルヴィは強く頷いた
「うん、強くなりたい、父さんや姉ちゃんも、旅に出てて、出来たら会えたらいいなあとか、姉ちゃんは出稼ぎなんだけどさ、僕もそういうこととかして、家の助けになりたいっていうかね、英雄グラニード様みたいな、強くてみんなを守れる勇者になりたいんだ!」
「それは、立派だな、出来るといいな!・・・グラニードか、憧れるんだろうな、第一歩ってことか」
ルーファスに褒められて、アルヴィは得意気だ
そして、ジョニーは?とルーファスは問うた
「えー、いっぱい歩いたから、わかんないもん、一人旅は気楽だからいいよねぇ」
「・・・ジョニー、もしかして、家出か?」
ジョニーの顔が、ヘラヘラしてないのを、ルーファスは見逃さなかった
アルヴィはええ?!と、驚いた顔をして、ジョニーの返答を待った
「家出とか、失礼だな、そこまでバカじゃないもん、お母様に断りは入れてきたもん、家出してたら今頃、連れ戻しに来てるのとかにつかまってるもん、一人旅したいんだもん、じょにーはアルヴィより強い魔道士なんだぞー」
ジョニーはご機嫌斜めに、そう言った
「そっか、家出じゃないなら悪かったよ、お母さんは納得してくれたんだな?」
「お母様が、このバッグを用意してくださったんだからな、キャンディ10個入れてくれたんだぞー」
家出ではないらしいと、アルヴィもルーファスも、ひとまず納得することにして、なんとなく言いたがらないのを察したのもあり、母親が準備したならいいかと
ルーファスはなにしてんの、とジョニーが返す
なんでグラスネイド王都から来てんの、と
「グラスネイドは、故郷なんだ、今は仕事もないから、フラフラ旅して楽しんでるんだよ」
「王都かあ、すごいなあ、僕も行きたいな、グラニード様に会えたりしないかな?!」
「ジョニーは別にグラスネイドとかキョーミないなあ、何が面白いのー」
ここも、田舎だけどグラスネイドの端っこなんだけど?!
と、アルヴィはツッコミたくなったが
「話は大体わかったよ、君たちは目的地がないってことだな、決めておいた方がいいと思うな」
ルーファスの助言に、アルヴィがキラキラしながら、グラスネイド王都に行く!と言い出した
それを聞いたジョニーがすかさずヤダと言ったが、そこでアルヴィは言ったのだ
「僕は、王都に目標の印をつける!ジョニーはジョニーの行きたいところに行けばいいじゃんか」
「なにそれ、助けてあげたのに、解散なんだ?せっかく助けてあげたのに!」
「僕は王都に向かいたいんだ、そうしたら目標に近くなりそうだし、色んな意味でいいと思う、助けてくれたのはありがたかったけど、君はワガママすぎ!」
ケンカするなと、ルーファスは言うが、そもそもこの三人は、パーティなわけでも、なかった
旅の道連れは、まだパーティではなかった
「ジョニーは、アルヴィと一緒に行きたいんだろ?決めた先が無いんならいいんじゃないのかい」
「王都はヤダ」
「なんなのさ!知らないぞ、勝手に好きなところに向かえばいいだろ、疲れたから僕もう寝るから!おやすみ!」
アルヴィはそう言ったと思うと、端のベッドに潜り込んでしまった
「むー・・・可愛くないな」
と零して、ジョニーも反対側のベッドにふてくされるように潜り込んだ
やれやれ。
ルーファスは、子供のケンカをどうおさめるかと、髪をかきながら、静かに部屋を出た。
宿の付属のような、酒場。
安酒をチビチビと喉に流しながら、ルーファスは自身のお節介を嘆きつつも、これは俺がなんとかしてやらないとなあと考えていた
会って間もないけど、あの二人は気は合いそうだし、助けたときの咄嗟のコンビネーションはいいものがあった、
大ネズミをたたみかけるように倒していた二人の様子は、タイプは違っても相性はいい、なんとなく故郷に残してきたかつての仲間を思い出したりもする
ルーファスには、共に戦う相方がいた、相方のカシェルは、冷静なルーファスと違って熱くなりやすい男だったが、それがまた相互効果でいいコンビネーションを保てたりもした
カシェルは、そして恋人のヴィアーナや、仲間たちはどうしているか、妹もいる
グラスネイドには、様々に残してきたものがあった、ルーファスもそれなりにワケアリではあった
それに、あの危なっかしい二人をこのまま旅立たせていいものか、これでバラバラに足が向いたりすれば、レベルも低い子供たちは、一人で倒れて夢もかなわずの可能性もなくはない
「素敵なお兄さん、もう一杯いかが?」
酒場のうさ耳の踊り子が、ボトルを持ってやってきた、その酒は旨そうだが、予算がないと告げると、踊り子は別の酒を差し出してきた
「それくらいなら、一杯だけ」
安酒を食らう、ルーファス、彼もまだ若いが、苦労性なのかお節介なのが幸か不幸か、一人旅の気ままのまま、いられないものがあった
どうしたもんかなあと、巡らせて
「お兄さん、可愛い子達をお連れだったわよねえ?まさかお子さんじゃないわよね?」
「ははは、俺はまだそんな歳じゃないよ、ちょっと道で拾ってしまったんだよ」
「あら、迷子かしら?」
「あれでも立派な冒険者のたまご、なんだよ」
「へぇ~、可愛い冒険者ね」
とか、酒を流していると、酒場に子供が来ちゃいかんという声がした
「あ!ルーファスさん!よかった、ここにいるかもって思って!」
アルヴィが、なんだか焦ったような顔でルーファスを探していたようだった、
「ジョニーがいないんだ、宿の中探したけど、荷物もなくて!」
ルーファスはアルヴィに部屋で待てと言ったが、アルヴィはきつく言ったから、僕のせいかな、と
部屋で待てる気持ちではなくて、離れないようにと言い、夜の町を探すことにした
子供だけで、こんな時間に外にいるのは、危ないとアルヴィでも考えた
ましてや、ジョニーはあのいでたちで、見た目は美少女、身なりも少しだけいい物を持ってる感がある
嫌な予感しかしないわけであり、ふてくされて出て行ったとしたら何処かと、聞き込みをしながら足早に探しまわった
「ああ、金髪のピンクの服の子か?なら、さっき道具屋の方に走ってったかな」
という、目撃情報が聞けたので、道具屋に向かう、アルヴィが心底心配そうにしていて、僕が冷たいこと言ったからと、悔やんでいた
道具屋、夜は閉店している、夜は人もまばら、小さな町の外れの方の道具屋だ
町外れで灯りも暗く、心配ばかりが先走る
だか、見回っても人影は見えない
まさか、外に出てないだろうなと、夜は魔物も凶暴だ、ジョニーひとりでは、先程までの森の道よりも魔物が強く、ファイアーが効きにくいヤツもいることを、通ってきているルーファスならわかる
と、なにか光った、ぼうっという音がして、何か物音が
走りだすアルヴィ、その方向に向かってみたところ・・・
「ジョニー!」
魔法の杖を振ったあと、という感じのジョニーと、道に倒れている男
「ちょっと、なにしてんだよ・・・夜は危ないよ!」
「大丈夫か、こいつ、何かしてきたのか」
道に倒れているのは、酔いの回った男で、ファイアーを食らったようだ
「なんか、気持ち悪いからやっつけた」
ジョニー曰く、道具屋に来たのはキャンディを買おうと思ったからで、レストランに行こうとしたら子供だけでは夜はダメだと言われ、そのファイアーされた男は、別の食事処に案内するという口実で、可愛いねえとかうるさいので、流石に気持ち悪くなってぶん殴ったらしい
「ジョニーは女じゃないぞって言ったら、確かめるとか言い出してさ、嘘つきの酔っ払いは信用ならないな〜」
手加減はしたぞと、ジョニーはご立腹だ
当たらずとも遠からずだったと、無事でよかったと言われ、ジョニーはきょとんとしている
「僕が悪かったよ、きつい言い方してごめん!だからこういうことはしないで!」
「まったく、夜中にひとりで歩くんじゃないぞ、アルヴィだってすごく心配して・・・」
と言われても、ジョニーはピンとこないらしく、そんなに心配されなくてもジョニー強いし〜とか
飄々としたものだ、アルヴィはちょっと殴りたくなったりもした、どれだけ心配したと思ってんだよ!と
「あんたら、そこでなにしとる」
不審に思った道具屋の主人が、声をかけてきて、そこそこに事情を話したところ、酔っ払いは息子だという
「せがれが申し訳ない、酒癖が悪くてな、きつく言って聞かせます、こやつは人は悪くないんですが、酒と女の子には弱くての、おじょうちゃんは怖かったろう」
ジョニーは男の子なのにとぶつくさ言うが、お詫びでMPキャンディを袋詰めで貰い、機嫌が直った
道具屋のせがれは、翌日、服の軽い焼け焦げを見て、大層に反省し、禁酒したらしい
「ホントに心配したんだからね?!」
「腹が減っただけってな、そうなら言ってくれ」
心配で詰め寄られるジョニー、空腹でレストランに行きたかっただけで、他意はなかったそうである
アルヴィの心配はどこへやら、である
「むー、どこも子供は夜はダメってさ、ルーファス呑んでるなら誘ってよね」
「つまみでいいなら、食え食え・・・はあ」
先程の宿の酒場で、バニーの踊り子に特別に計らってもらい、つまみや小料理を子供二人に食べさせていた
よかったわね、と微笑まれて、アルヴィがもじもじしているが
「僕さ、考えたんだけど、ジョニーはひとりで旅出来ないと思うんだ、危なっかしい!だから」
「らりは?」
なにさ?と言ったが、口に肉が入っていた
「ああもう、ジョニー、僕とパーティ組もう!僕も仲間は必要だし、魔法も頼りがいはあるし、でもグラスネイド王都に向かうのは譲れないからね!どう?!」
アルヴィは、アルヴィなりに、放っておけないけど憎めないジョニーと、どうしたらいいか考えた
きつく言ってしまったのはよくなかったと思うし、一緒にいて、そんなに悪くない気がしていた
「なに、やっとその気になったの〜、まあ、アルヴィは弱いから、じょにーが助けてやらないとな!」
ジョニーは、なんだかんだとアルヴィが気に入ったらしい、パーティになったような気でいたが、そういうわけではなくて、我儘なところがあるジョニーとしては、もどかしかったのだろう、自分から言い出すほどジョニーも素直じゃなかった
「まったくさ、よく言うよね!ジョニーだって相当に危なっかしいのにさ!」
「じゃあ、二人でパーティだな、勇者見習い剣士と、魔道士なら、いいコンビだな、ははは」
ルーファスも、ホッとしていた、俺もカシェルやヴィアーナと喧嘩もしたなと、思い出しつつ
まとまってくれて、一安心だ、グラスネイド王都に向かうことも、我儘ジョニーの気まぐれのイヤ、だったのかも知れないと思った
「可愛いパーティ結成オメデトね、ジュースはサービスしちゃうわ、こういうときは乾杯よ!」
踊り子が、ジュースを三杯持ってきてそう、祝ってくれた
お兄さんも、ジュースでいいわねと
「ありがとう、営業時間終わってるのに色々とすいません」
「いいのよ、あとはお兄さんのことじゃない?決めたのかしら」
バニーは、接客経験が深いのだろうか、見透かすような、見守るような一言だ
「ホント、ルーファスさんも色々ありがとう、僕たちだけだったらって思うと・・・お世話になってばっかりだね」
アルヴィが、そう言いつつ、乾杯のグラスを持とうとしたら
「じゃあ、俺も乾杯に混ぜてくれるかな」
え?という顔のアルヴィと、早くしろという顔のジョニー
「俺も、パーティに入れてはくれないか、お前たちだけだと不便もあるだろ、心配なのもあるけど、見ていたい気もして来たんだ、保護者兼仲間ってことで、助けになれたらなあと思ったんだけど」
ルーファスが、決めたと、アルヴィたちの言葉を待つ
「あっ、ありがとう!ホントはそうだったらいいなと思ったんだけど、迷惑かと思ったんだ、ルーファスさんがいてくれたら、ホント安心だし、嬉しい!」
「アルヴィがいいならジョニーは別にいいけど」
三人、グラスを持って
乾杯!
改めてよろしくな!
早く飲む〜!
と、それぞれがやっと、満面の笑顔での乾杯を交わした
「・・・れむい、良い子は寝る時間・・・」
ジョニーがうとうとしだす、時間は日付が変わっていて、アルヴィも安心したのか、気が抜けてあくびをした
「なにが良い子だよ〜、明日寝坊しそう、ふああ・・・」
「寝ような、一件落着な」
店を閉めながら、バニーな踊り子と、裏で調理をしていた店主が、
「今日のお客さんは格別にいい酒の肴になりそうね」
「ビアンジュちゃん、いい仕事だったねえ」
「あたしにも、あの子くらいの息子がいるから、お兄さんの気持ちわかるのよねー」
「イリアス君と、どれだけ会えてないんだい」
「何年にもなるわ、もう13になるはずね・・・」
「イリアス君が、いつかあの子たちと会ったりしたら楽しいねえ」
「そんな、あったら奇跡みたいじゃないの、うちの息子あんなに素直じゃないわ」
うさ耳の踊り子ビアンジュは、若く見えて30近かった
息子くらいの子だと思うと、肩入れしたくなった、その日の酒場だった。
翌日、アルヴィたちは、まんまと9時まで爆睡し、ルーファスに起こされてなんとか起床して
道具屋で、薬草などをお詫びサービスで割引して貰った
そのおかげで、ずいぶん予算が出来たので、アルヴィの剣を買うことが出来たのだった
鉄の、普通の剣だが、愛用していたボロい剣よりは切れ味もよく、レベルも上がっていたのも相まって、アルヴィの攻撃力は少し上がっていたのだった。
ボロい愛用の剣を大切にしまいつつ、売ることはしなかった、その剣は父が使っていたもので、大切だからだ
地図を広げれば、次の町は、レトの町がいいという話になり、レトに向かう、地図のグラスネイド王都に、印を大き目に書いて、それからするとレトの町は近くて小さいが、ルーファスが通った道より、少し経路を変えたのもあった
「次の仲間はさ、僧侶がいいと思うんだ」
アルヴィは、仲間ができて嬉しくて、四人にしてみたいと、浮かれていた
「剣士と魔道士と、ルーファス元騎士だっけ?それでなんで僧侶さ、わぁふつう」
ジョニーは、別にもういいじゃん、みたいな顔である
「僕たちの中で、回復魔法使える人いないじゃないか、これだと、薬草かさみすぎて大変だよ」
「まあ、いいんじゃないか、増えるなら僧侶、悪くないよ」
ルーファスとしては、まともに頼れる僧侶が増えるなら歓迎だと思った
「じゃあ薬草タダでくれる道具屋を仲間にすればいいじゃん」
「ジョニー、そんな道具屋いないから!」
「僧侶は魔法使うから、じょにーが目立たなくなるからヤダ!薬草タダでくれる道具屋でいい」
「出来るかよっ!」
仲間だからタダで、とか無茶苦茶を言うジョニーを尻目に、アルヴィはまだ見ぬレトの町に、新たな出会いを期待していた。
賑やかな、アルヴィのパーティは、まだ弱めの魔物を倒しながら、目標グラスネイド王都として、進み始めた。
2025/12/4アップ
