独占したいのは好きなら当たり前だろ?

キメラの翼を、摘んで眺めている、こういうの、相棒に似合いそうだよなぁ・・・なんて考えながら。
でも、何処かへ飛んでいってしまっては困るので、嫌なので、髪に飾るのはやめたし、むしろそんなことして怪訝な顔されても困るので、しなかったけれど

あの、サラサラの綺麗な髪に、なんとも似合いそうだよなぁ
それで、あのふんわり柔らかい笑顔をくれたら

イヤ、待て待てオレ。
なーに、考えてんだよ!

自分で自分にツッコミを入れて、頭を軽く振ってから、側にその相棒がいて、不思議そうにこちらを見ているのに気付くカミュだ

あ~あ、参ったなあ、何を見ても何をしてても、お前のことばっかり考えちまう・・・重症だなと自嘲する
彼、カミュは、最近自覚したことがある、相棒と呼ぶ相手、同じ男である勇者さま、イレブンが、好きだと

あの、ふんわりした優しい笑顔を独占したい欲望、オレのためだけに向いてたらいいのにと思ってしまう、己の独占欲の、なんと強欲なことか
兎角特に他の男に向けられていると無性に腹が立ってしまって、そこからイレブンを引き剥がしてしまいたくなる
この間などは、自分が道具屋に寄っていた数分の間、イレブンから自分の目が離れていた結果、近くの酒場から出てきた数人の大男の酔っ払いにイレブンが絡まれる羽目になってしまった
イレブンときたら、絡まれている意味がわかってはおらず、ニコニコとその、分け隔てない笑顔を大男のゴロツキに向けていた
街の人との区別つけてくれ、相棒!ソイツらお前を・・・あああその先は考えたくねェし起こさせない
なんだ、ちっちゃいニイチャンと、ゴロツキがカミュに向かって投げた雑言に怒ってるんじゃない、その手を、オレの相棒の肩に、汚ぇ手で触るんじゃねぇ!とまでは言ってはいないが、その形相はビーストモードの時より怖かったと、イレブンは言ったものだが

夜、寝る時も、考えてしまう、あああ、浮かんでくるのは相棒の無邪気な笑顔、その使命に悩みつつも真っ直ぐな瞳で前を見据える、ちょっと切なげな顔、戦う時の凛々しくも頼り甲斐が出てきたその表情とか
どこをとっても魅力でしかない、カミュ、とその声で無邪気に呼ぶ、何か何気なくフォローしたり相談に乗ってる時も、大したことしてないのに、ありがとう!と嬉しそうに言ってくるその、全てが好きで

あああああ、隣で寝てんだよなぁと、カミュは一人、ごろんと起きたままの寝返りを打つ
ふと寝顔を覗いて見れば、なんとも穏やかにすやすやと眠るイレブン
ああ、可愛いモンだなあ、こんなに無防備なのにオレと来たら手も出ねェ
情けないとも思うが、無理矢理何かしたくない、同意は得たい
その前に告らねぇと、どーにもならねぇが、言えるか!
イレブンは男だ、オレも男だ、それだけでもまず、お互い一応ノーマルなはずなんだから、言えるわけもなくて
イヤまあ、自分としてはそこはもう、なんでもないというか、好きなんだからどうにもならねぇと、寧ろこの可愛い勇者さまがオレのものになるなら喜んで抱きたい程だっての!
既にイレブンじゃないと、気持ちよく処理も出来なくて、無理矢理知らない女の影など想像出来なくなっている
重症だ、オレもう、こいつじゃないとダメになってる

何気なくイレブンが置いていたキメラの翼、こいつがあれば、イレブンを連れて何処へとなり飛んで盗んでいけるかと
そう思いながら、出来るわけねぇよな、と自嘲気味に呟いていた夕方のこと

寝るか、と布団にくるまってしまおうと、思ったが
隣で寝ているイレブンの温もりが、伝わり過ぎる、大体今日は嬉しくも困ること、ベッドの数が足りず、宿でひとつのベッドで寝るのを余儀なくされた訳であって
最初は、セーニャが、小さな体のベロニカとなら一緒に寝ても大丈夫と言ってくれてたのに、イレブンが、大丈夫、ひとつのベッドなら僕達慣れてるよね!とカミュを見てきたのだ
おう、と応えてしまって今に至るのだ

自業自得かー

温もりが、気持ちよくてたまらない
イレブンが温めた布団で眠れる、嬉しいがどうにもならねぇ
今のオレと一緒に寝ちゃダメだぜ、イレブン
もういっそ、ここを初めてのベッドにしたくなるが、寝込みを襲うなんて出来ない
なんでそんなに無防備で無邪気にすやすやと眠れるんだ
オレの気も知らねぇで、全身で信頼を寄せられるまま、温もりに何かが溶けてしまいそうだ

手がイレブンの横顔に触れる
温かな温もりの主、頬がすべすべで、ふにゃっと柔らかくて
その唇を奪いたい、もうなにもかも溶けたい
けど、肝心なところで働く自制心
要るけど要らねぇ自制心
ダメだぜオレ、ここでそれをやっちゃあ、全て失うかもしれねーぞ!

「カミュぅ・・・・・・?」

ジタバタとしてたせいか、起こしてしまったか、イレブンがふにゃふにゃしながら目を覚ます

「わりぃ、起こしたか」

「んー、カミュ、まだ眠れないの?」

「あーイヤ、ちょっと、な、・・・すぐ寝るからお前も寝ろ」

「・・・カミュも寝なきゃだめ・・・・・・」

わあ?!
イレブンが、カミュを寝かすつもりか、覆い被さってきて、そのまま再び寝落ちた

オイ・・・!
最高に嬉しいが困る事態になった
わりとこれ、有ることで
前もそんなことがあったなー、とか誤魔化すものの

うっすら、イレブンは目を開けている
起きてるなら、寝ぼけてるなら、どうにかよけてくれ
お前を傷付けたくなんてないんだ
無理矢理やりたくないんだ

「かみゅ、すき・・・」

・・・!!

寝ぼけてそんなこと、寝ぼけてても言われたら堪らない
お前の好きはオレの好きと別のヤツだろ?
わかってるよ、だから止めてくれ
オレのこのままの勢いを止めてくれ

「イレブン、寝ないと食っちまうぞ」

何言ってんだ!オレ!

「うん・・・お腹空いたのかみゅ?僕食べても美味しくないよぅ・・・おやふみぃ・・・すぅ」

寝たか・・・・・・はあはあ

やばかった、勢い余るところだったじゃねーか
寝よう、もうここは寝とくしかねぇ

翌朝。
爽やかにイレブンが伸びをする
昨日の寝ぼけた事態など覚えていないだろう
昨日の「すき」が残る、意味が仲間の、信頼のそれなのはわかってんだ
けど、残る、すき、寝ぼけててもすきだなんて、思い出しただけでニヤけそうになる、
その顔を隠すためにしかめ面になる

「カミュ、ちゃんと眠れた?」

「あ、ああ・・・まあ、そこそこ寝たぜ?」

「そんな顔しちゃって、寝不足なんじゃない?無理しないでね?」

おう、優しいな
ん?この口ぶりだと、昨日の寝ぼけてた間のこと、覚えてんのか?

じゃあ、まさか、すき、も覚えてんのか?!
食っちまうぞとか口走ったのも覚えてんのか?!

「ごめんね、昨日僕、寝ぼけて何か変だったような気がする、寝不足、僕のせい?」

「いや、大丈夫だ、オレはもともと短時間睡眠なんだ、気にすんな、お前がよく眠れたならいいんだ」

誤魔化す、寝不足なのはそうだと思う
でもイレブンより先に目覚めるのは、既に癖というか体が覚えてることで、寝不足だろうがなんだろうが目は覚める

寝不足気味は後を引っ張った
ぼーっと顔をしかめてたのが悪かった、その日の宿の部屋割りが、部屋に余裕ある宿だったのもあって、一人ひと部屋ということになった、イレブンとの連続同部屋記録が、自分の寝不足顔で止まってしまった
ゆっくり寝てと、仲間たちに言われ。

イレブンの顔を見た、な、何かしょんぼりしている、寂しいのか、もしかして
都合のいいことを考えたとオレは思ったが

「カミュ、あとでカミュの部屋に行ってもいい?」

構わねぇけど、どうしたと

「あとで、行くから」

寂しそうに、イレブンは隣の部屋に入っていった

「イレブンってば、なんかおかしいわね、アンタなんかしたんじゃないでしょうね?」

おチビちゃんもとい、ベロニカが腰に手を当て見上げながら、なにやら訝しげに詰め寄る

「イレブン様、寂しそうでしたわね、カミュ様とご一緒じゃなくて、寂しいんでしょうか」

セーニャが心配げに言ってくる

「アンタ、いくらイレブンに気があるからって、変なコトしてないでしょうね!最近のあの子なんだかふわふわしてておかしいんだから」

イヤ、ちょっと、待てよ、なんでそんな、お前なんでオレがあいつに気があるからとか・・・!

「ヤダぁ、バレバレ♡なんだからぁ、カミュちゃんとイレブンちゃんはアモーレな赤い糸で結ばれてるんでしょ?男ならそろそろ、キメなきゃだめよん♪」

シルビアまでがそんなことを言う、バレバレだったのか・・・

なんにもしてねぇし、出来るかよ!

オレは部屋に入り、さっきの言葉を振り返る
男ならキメなきゃか・・・
そういえば、確かに最近のイレブンはふわふわしてて不安定な気がするな
笑ってるから大丈夫と思っていたが、何か思うところでもあるのか、でもそれなら、いつもなら一番にオレに相談してくるはずなのにな・・・

ぼーっと考えていたら、ドアをノックする音が
イレブンだな、と戸を開けてやると、枕持参で、イレブンがもじもじしながら立っていた

「あの、ね、一人で眠れる自信ないの、一緒に寝たい・・・」

ダメかな、と言ってくる可愛い相棒の願いを断る理由なんて、何もないはずだ
結局同部屋記録は保持された、オレも正直言えばイレブンが隣で寝てないとなにか忘れ物してるみてぇで、落ち着かないからな

枕を隣にぴったりとつけて置いて、狭いベッドで二人、というかオレがいる部屋、ツインなんで、隣のベッドで寝ればいいはずだった、のに
イレブンはオレが寝るつもりで布団をめくってた方に枕を置いたんだ

ん、これは、よく考えたらやベェんじゃ・・・
また、横で寝息をたてて可愛い寝顔ですやすやしてたら、オレがまた、素でビーストになりかける
オレだって、好きなやつのそばで寝てたら、獣にもなるってもんだ、淡白に見られがちだけどな
それを、どう抑えろと言うんだ、昨日のリプレイしちまうぜ

イレブンは、何か思い詰めたような顔だ、心配だな・・・
そうだよ、こいつ何か最近はふわふわした、不安定さがあるってみんなも言ってたしな

「お前なんか悩んでることとか、ねえか?最近様子がおかしいって、みんなも心配して・・・」

「う、なんでも、ないよ」

なんでもなくない顔だぜ、それ
言っちまえ?
吐き出して楽になれよ?

「な、なんでもないもん、カミュがおかしいんだもん、僕はおかしくなんてないもん・・・」

「は?オレ、何かおかしいのか?オレのせいか?!」

イレブンはうるうるしながら、布団をぎゅっと握りしめる
わりぃ、こんな時だけど、それ可愛いぞ
言わねーけどよ

「それだよぉ、カミュはっ、僕のことばっかり心配してくれるけど・・・カミュも最近なんかへん!」

・・・?
オレも何か変か?
・・・・・・態度に出ちまってるって事かな・・・

「オレ、どんなふうに変か、教えてくれるか」

「だって、そうやって、僕を心配して、見てる目とか全部・・・見てたら僕がおかしくなっちゃうんだよぉ!」

うるうるしながら、訴えるイレブンは限界が来てそうだ、
そう、か・・・
半分くらいはわかった、態度に出ちまって困らせたってことだな・・・

「カミュ、がまん、しないで?僕も、カミュのこと、心配なんだから・・・」

「・・・‼︎」

何か衝撃が走る、さながらライデインか、今まで制止して我慢してなんとか抑制したものが、抑えきれなくなる

気付いたらオレはイレブンを抱きしめていた

「かみゅ・・・?」

「悪かった、オレ・・・お前をかえって困らせてたんだな」

「かみゅ」

「聞いてくれるか、相棒、俺の気持ち」

イレブンはうるんだ瞳をオレにまっすぐ、うん、と頷いた

「イレブン、オレ、お前が好きなんだ、好きだ」

真っ赤なイレブンのその顔がたまらなくなって、たずねもせずにくちづけた

「か、カミュ」

「嫌か?」

「嬉しい、僕も、僕もカミュ大好きだから・・・」

イレブンの瞳から大粒の涙がぽろぽろと、でも今までにないくらいの笑顔だ
ふんわりのいつものより、更にいい笑顔で

「お互い、我慢しなくていいこと、我慢し過ぎてたみてぇだな・・・」

「僕、優しくされるたび、ドキドキしちゃって、他の人と話してるの見たらもやもやしちゃって、好きって気付くの随分かかったけど、カミュも同じってあるわけないと思ってたから・・・」

同じだな

「黙ってるの苦手、だから言いたかったのに、部屋割り一人ずつで、さみしくて。僕ってこんなにわがままだったんだって、頭がごちゃごちゃして」

「同じだ、オレもそんな感じだ、言うつもりなかったんだけどな、けど言えて良かった」

オレたちは、そのまま、しばらく抱き合った

「なあ、イレブン、抱いてもいいか?」

正直もう、抑えきれねぇ
どんどん出てくる、独占欲
オレのものにしたい気持ちが溢れ出て
オレの色に染めてお前の色に染まりたい
交じり合いたい

染まった顔で、頷いたイレブンを押し倒したあとは
気持ちがルーラしたように飛んで
二人だけの世界を床の上で旅した

「大丈夫か?体とか痛くねぇか」

イレブン、可愛過ぎた・・・オレのものにしちまった、激しくしないようにしたかった、大切に、初めてなんだしと制したかったのに、欲のままヤッちまった気が・・・

「カミュ、優しいから、大丈夫。僕こそ、うまく相手できてなかったんじゃ?カミュも気持ちよかった?」

最高だったぜ
お前可愛過ぎだぜ

可愛いと言われて、僕可愛くなんて・・・と、それはああいう時だけにしてほしい、と、頬を染めて言う
無理だろ、可愛いんだよ、ハア、お前が全部可愛い好きだ

「なあ、夜くらいは、お前を独占してもいいか?」

せめて、夜だけは、オレのものでオレの欲のまま
お前が好きなオレのすべてをさらけ出してたい
まだ、夜だけ
もし、世界が平和になったなら
昼も朝も夕方も、独占欲は膨れ上がる
好きって強欲だ

「僕はいつでもカミュのものでいたいよ」

そんなこと
言われたら

第二ラウンド、もっと熱く
棚の横に置いたキメラの翼が、見てた
青い宝珠の飾りが、二人の重なる様を映していた

翌朝
二人の変化を見た仲間たちは
無事におさまったようだと安心し、
カミュとイレブンは、一層二人の仲が深まり、連携などもますます冴え、
唯一無二な関係に育っていったのだった

夜は二人の秘密
独占欲は夜空より深い

2025/10/20 RinnaAyakawa