第6話 「マジギレプリンセス」

騎士プディングとラズベリー王子は、森の中を進んでいた。
スッタスッタスッタスッタと早足で歩くプディング。
その後を無言でついていくラズベリー。
その二人の間は、3メートル。
しばし無言で早足の二人だったが、ラズベリーが口を開いた。
「ねえ、プリンちゃん。何処へ向かっているんだい?」
相変わらずスタスタと、ラズベリーを置いていきそうなくらいで歩いていたプディングもようやく口を開いた。
「・・・魔法研究所だ。」
「へえ。何でまた?」
「カンだ。」
「へーえ。」
「何か異存あるか?」
「いーや、無いよ。プリンちゃんが行きたいなら。」
「・・・オレはお前のお供なんだ、お前、何か不気味だぞ。」
しっかり3メートル守って、無言でついてくる今のご主人様に、プディングは不気味さを感じていた。いつもなら、もっとちょっかいかけてくるのに・・・。
「僕もねえ、今回はちょっとマジで気になるからね。
君と遊ぶのは、コレが終わってからでもいいかなって、我慢してるんだよ。
えらいだろう?側に来てイイコイイコしてくれる?」
「あほか。」
二人はというかプディングは、呆れた顔をしながら、早足のスピードを上げた。


一方こちらは魔界。
そこには、魔界王ブラックペパーがいた。
「あーぁ、寂しいなあ。カルボナーラは人間界に行ったまま帰らないし、
ブレッドも何処か行っちゃったし、バケットも行方知れずになるし・・・。
ボク、バケットが怒ったのかと思って、遊び相手の女の子達みーんな里へ帰しちゃったのに。
家族がバラバラになるなんて、悲しいと思わない?
ボクは王様だから探しに旅になんて出られないし。
ああ、悲しいよ。ねえ解るかいこの、心に開いた穴。」
魔界王の愚痴を聞いているのは、魔界四天王の面々。
「ええと、どうされたんでしょうねえ。」
そう言ったのは四天王の一人、アルデンテ。
「陛下、何だか情けないので、しゃんとして下さい。」
次に言ったのは同じく四天王のレア。
「だってぇ〜。寂しいものだよ?君たちだって、家族が側から離れてしまったら寂しいだろう。
オマケに妻に逃げられたのかも知れないと思うと・・・何だか泣けてきちゃうよ。」
確かに情けない魔界王。その姿は、王というには若すぎる、少年に見えた。
四天王のあと二人、ミディアムとウェルダンは、顔を合わせて苦笑する。
「君たちまでいなくなったら寂しいけど、探しに行ってくれる?
あ、これ一応命令ね。ボクはお城で寂しいの我慢して、魔界ガーデンの
マンドラゴラの世話でもしながら紛らわせて待ってるから。」
4人は顔を見合わせる。
「命令だって。どうする?」
そう言ったのはミディアム。
「ここで愚痴聞いてるよりは楽しいかもな。」
と、ウェルダン。
「情けないけど命令だしねー。」
とアルデンテ。
そんな風にこそこそと相談して、
「解りました。我らが姫様方を探して、お連れすれば、陛下も落ち着かれますね?」
「うんうん。アルデンテ、ありがとう。じゃ、お願いね。」
「はい。」
「しゃーねえなぁ。」
「やれやれ・・・。」
「さ、行くわよみんな。」
そうして、魔界四天王は、行方知れずの3人を探す準備に取りかかった。
「はぁ・・・マンドラゴラの世話して・・・カルボナーラが誕生日にくれた人間界産のくまちゃん抱っこして、帰ってきた3人を迎える贈り物でも
考えて、気を紛らわそう・・・っと。」
何か、頼りない魔界王であった・・・。

魔界の違う場所。
そこには、バケット・・・いや、精霊神ミーソと、牢の中で苛ついている
アプリコットがいた。
アプリコットは、心の中で、自分の中の精霊神ソルトと会話していた。
(・・・信じられねぇなあ。俺様がソルト神だってかよ。)
(そして、お前の妹ミントは、シュガーなのだ。)
(ミントがシュガー神か・・・ソイソースとビネガーは?)
(解らぬ。我らは、一度人間へとこの通り転生し、己の意識をこのように残してある。
だが、あの二人は何処へ行ったか・・・。
共に暮らすシュガーはすぐに解ったのだがな。巧妙に力のかけらを隠しておるようだ。)
(ふーん・・・。)
己の中のもう一人と、不思議な会話をするアプリコットを見るミーソは、
「何だ、大人しくなったな。諦めたか。」
そう、フフンとすすり笑うように見下す様に、牢へ近付いた。
「別に。」
「ふてくされたか。」
「どうでもいいけど腹減ったぞ。せめて飯くらい出せ。」
「食事か。人間は面倒だな。」
「精霊神は霞でも食って生きてんのかよ?」
「ふっ、何処ぞの国にはそんな話もあったな。魔界料理がお前に食えるかな?」
そう言ったかと思うと、ミーソは戸棚から何だかグロテスクなものを取り出して、
牢の中へ放った。
「マンドラゴラの干物だ。食えるものなら食ってみよ。」
「うわー・・・なんだこりゃ。食えるかこんなもん!」
「姉妹揃って、牢の中で餓死するか?フフフ。」
その、姉妹揃ってという言葉にアプリコットの瞳の色が変わる。
「・・・ミントに何かしたら、許さねェ!」
睨むアプリコットを鼻で笑って、ミーソは部屋を出ようとした。
「待てよ!」
格子をガタガタいわせながら、険しい顔をしてミーソを呼び止めるアプリコット。
「じきに、可愛い妹もそこへ連れてきてやる。」
ミーソは、アプリコット相手として失言したことに気付かなかった。
その一言で、アプリコットの何かのたがが外れた。
左耳に手を伸ばし、ピアスを外す。
その途端、アプリコットの魔力が一気に、閉じこめられていたものが吹き出すように
燃え上がるように上昇していく。
「もう我慢ならねえ!!言っとくけど、こいつを外したら、俺様は自分を止められねえ。
お前がしたこと、しようとしてること、全部後悔させてやるぜ!!!」
ピアスに魔力制御のアイテムをつけていたのだ。
ミーソは、精霊神最高の魔力の持ち主である。
そのミーソをも、凌ぐほどの魔力が放たれている。
「リーディア・ファン・エウリジータ・・・」
アプリコットは、ろくに使ったことのない、超が付くくらいの高等魔法を詠唱する。
「・・・!!」
ミーソは、仮面の下に汗をかく。
あまりの魔力の上昇に、驚きは隠せない。
「燃えさかる魔の炎よ・・・炎神よ!炎の龍よ!」
「神格の魔法だと・・・!?」
ミーソがそう言ったか言わないかというとき、その炎神の炎は爆炎と化す。
炎の龍が姿を現す・・・。


一方、こちらは、魔界を目指すアールグレイ一行。
「ふーん。よくわかんないけど、面倒事みたいねえ。」
呑気なセリフは、パエリアの唇から。
「あのねあのね、私がシュガー様でお姉様がソルト様ってあああああ?」
パニックに陥っているミント。
「ブレッド君、どういうことなんだ?」
落ち着き払ってガナッシュは問う。
「はい、簡単にまとめてお話します。
ミーソ様は姉上を気に入っています。
姉上の心を掴みたくて、ミーソ様は色んなことをしてきました。
そして、人間界をプレゼントすべく、人間界にちりぢりになった精霊5柱神を
魔界に集め、その力を封じ、人間界の力の近郊を崩そうとしています。
精霊神様たちは、昔、人間へ転生されました。
あ・・・。」
ミントの表情が変わっていることに、ブレッドは気付く。
「説明ご苦労様。この通り、アタシはシュガー。精霊神中一番の美貌の持ち主よ。
出来れば、ミントの中に隠れていたかったわねえ。
でも仕方ないわ。ミーソちゃんが何かお馬鹿さんやってる様だから。
あの子って一途で不器用で、まーったく変わっていないのね。
困ったさんねえ。お仕置きが必要ね。」
「わあ、ミント様じゃないみたいだ。ホントに、シュガー神様なんですか?」
脳天気にアールグレイは聞く。
「ふふふ〜vそ・う・よ♪アタシこそが一柱神シュガー。
五柱神のリーダー格。アタシの前では、何者もひれ伏すのよ!
でも君たちは頑張ってるから特別にお友達にしてあげていいわよ。
あ〜ぁ、出来れば、ミントに色気が出てきてから、表に出たかったわねえ。」
・・・・・一同、言葉が無かった・・・。



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あとがき
何か久しぶりの更新です。何時にもまして文章が下手くそですね。
挿絵も描けなかったなあ。
変なキャラばっかりですいません。
ギャグ調って書いてて楽しいなあ。
続きます。


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