セリラナ小話


その日も、戦いの中にいた。
解放の暁を目指して戦っていた。
解放の旗印セリスは、息を切らせながら剣を振るう。
相手の一撃をかろうじてかわし、反撃してとどめを刺した。
ラナがすかさず杖をかざす。セリスの受けた傷も軽くはなかった。
みるみる痛みは消え、傷は癒される。
その日の戦が終わる。
勝利として。

「セリス様、お疲れ様でした・・・大丈夫ですか?敵の将から受けたお怪我は・・・。」
ラナが心配そうに、セリスを見る。
「大丈夫だよ、ありがとうラナ。君がすぐにリライブしてくれたから、大事に至らなかったし、もうなんでもないんだ。」
セリスはにこにことしながら愛しいラナのいたわりを喜ぶ。
「なら良かったです、でもご無理なさらないでくださいね、痛みなどありましたら、すぐ仰ってくださいね?」
ラナは心配そうな顔のまま、セリスの顔を見ている。
無理をして痩せ我慢をしてはいないか伺う様に。
「ありがとう。じゃあ、ちょっとこっちに来てくれないかな?」
セリスはにこにこしたまま、ラナの瞳を覗き込み、そう言う。
「はい、どこが痛みますか?」
ラナはセリスの近くに寄り、傷があるはずの辺りを見ていたが。
ふと、セリスがラナの肩を抱き寄せる。
「きゃ・・・せ、セリス様?」
ラナは抱き寄せられたその肩をすくめて驚く。花の顔がみるみる染まる。
「ごめんごめん。ちょっと罠をかけてみた、なんてね。ほら、何ももう痛まないし、ほぼ治ってるだろ?」
ラナを軽く抱き寄せたまま、セリスは傷の跡を見せる。
「はい、あ、あの、あまりいじわるな事を言わないでください、そんなに、その、はだけなくてもいいんですよ・・・?」
ラナはますます紅に染まる、全身染まりそうな心境で。
「ああ、ごめん。ラナは可愛いなあ、真っ赤だよ?」
「そ、そんな、今日は何だかいじわるです、どうなさったんですか?いつものセリス様じゃないみたいですよ?」
ラナの言葉に、苦笑してセリスは窓に視線を移す。
「流石、ラナは誤魔化せないね。
私は自分が至らない、非力で弱いままの成長してない自分が
許せないんだ、もっと強くなりたい。こんな不甲斐ない怪我なんて
しない力量が欲しい。指揮を下げてしまいかねない、自分の不甲斐なさが
許せないんだよ、イライラしていじわるしてごめんよ。」
セリスは窓からラナに視線を戻して笑う。すまなそうな笑みで。
「セリス様、弱くなんてありません。セリス様はご立派に戦っておられます。
私はずっと見ていますから、わかります。非力な私を守りながら戦える
技量もお持ちです、それに・・・弱さを知り感じられるからこそ
本当の強さを持てるのだと私は思います!」
必至な瞳でラナは訴える。でも笑顔だ。
「ラナ・・・。」
「それに・・・そんなセリス様だからこそ、ついて行きたいと私達は思うのです、そんなセリス様だからこそ好きなんです。」
「ラナ、ありがとう。すっとするよ、心が何処かに逃げてたみたいだ。
弱さにすがるなんて、将のする事じゃあないね。立ち直れたのも君のおかげだ。」
セリスとラナは立ち上がる。無意識にいつものように見つめながら笑う。
「無理をしないでください、本当に。
お辛い時はいつでもお側にいますから、我慢もしないでくださいね?」
ラナは強い瞳でそう言う。
「ラナにはかなわないなあ。
ねえ、さっきの好きって言ったのは、みんながという事?ラナがっていう事?」
セリスは笑顔を取り戻して、先ほどとは違ういたずらを言う。
敢えて。照れ隠しもある。
「それはその、みんなもですし、その、私もです・・・。」
ラナの顔がまた染まる。強い瞳が少女のあどけない瞳に戻る。
セリスはそれを聞いて、満面の笑みで返す。
「ありがとう、僕もラナが大好きだよ。」

明日もまた戦いだけど、今は優しくて甘い時間にしても
良いかなって、思う二人だった。

なんとなくスマホで書いてた小話です。
セリス様が何からしくない気もしますが、久しぶりに書いてみて楽しかったです。



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