誕生日後日談 第二訓「本当に欲しいなら行動に出て現せ。」

ケーキのホールの半分を、一人で平らげた昨日。
何でもない日おめでとうな今日。
10月11日。カレンダー見ても何もない日。
かじりついたんまい棒チョコバーのくずが落ちる。昨日桂が置いていったもの。
何だろうね、この、物足りなさは。
んまい棒が物足りないわけじゃなくて。
昨日の火が、なーんかこう、消えない。
銀時の心の中に、妙な空間がもややーっと、そう、喩えるならばフラストレーション。
全然喩えになってない、そのまんま欲求不満。
甘酸っぱい苺とクリームのお味はよろしかったですとも。
喩えて言うならおあずけ食らった犬。
もっとわかりやすく言うなら、エロ本前にして買えないで帰っちゃったみたいな。
そんな青い日も甘い日も・・・いや、そんな純情な可愛い少年じゃなかったですけど。
じゃなくて、だからそんな青い日も一緒に居た、それがケーキなんて持って祝いに来ちゃったから。
何か火がついちゃった。あのまま行動に出てたら、あれはどういう反応をしたか。
趣味はエロいがカッチカチの中学生のような大真面目君。
それにいぢわるするのかたまらな・・・あ、イヤイヤ。
とにかく、銀さんの心の中に、火がついちゃったまま消えないわけですよ。
ケーキより甘くて美味しいのが食べたい。
珍しく笑顔なんて見せるから、こう・・・普段押し殺してるものが疼いてしまった。
何でいつもイラっとくるかって、何でいつも無駄にむかつくかって、
全部裏返し、全部いちいち反応してるから、馬鹿みたいに。
もういい加減ヤんなっちゃった、あのバカはそんなこと知りもしないだろう。
好意丸出しで懐いてくるアレに、どれたけ耐えているか知らないだろう。
もし好意をそのまま受け止めたら、離れなくなるだろう、アレは。
そうなったら・・・危ないのはそのバカだから。
もし、いい顔しちゃったら、均衡を崩すことになる。
だけどもう、いい加減ヤになっちゃったなーと・・・。
まあ、アレもそこまで馬鹿じゃないが、・・・イヤ馬鹿だわやっぱ。

ぐるぐるぐるぐる。
昨日のそれが頭の中に焼き付いたまま。
そんなこと整理整頓出来ない子供じゃあるまいし、何をこんなにもやもやしてるのか。

ピンポーン。

映るシルエット、和服の長髪。
飽きもせずよく通う。

「あ、桂さんですか。」
「今日はケーキ持ってないアルか。」
「神楽ちゃん・・・当たり前でしょ。」
「ケーキはないが大福ならあるぞ。」
「ヅラはは銀ちゃんの好きなものばっかり買ってくるアルなー。」
「まあ、選ぶ基準はそれだからな。リーダーも好きだろう、苺大福。」

今日も苺ですかコノヤロー。
って。
選ぶ基準そこかよ。
なんかもう、変に気が抜ける。

「ヅラ、お前ちょっと付き合えや。」
とりあえず、連れ出してやろう。お約束のセリフも聞いてない、という感じで。
「・・・何処へ行くんだ、銀とっ・・・」
突然手を引かれて驚く桂。
ぐいっと引っ張ってそのまま歩き出す。

「デートアルか。」
「何言ってるの神楽ちゃん・・・。
あ、大福全部食べちゃダメだよ、桂さんが持ってくるもの、半分は自分で食べないと怒るんだからね、銀さんは。」
「そんなこと言われなくてもわかってるネ。」
そんな、子供達の会話なんて、当の本人達は知りもせず。

「だから何処へ行くんだ、何なんだ。」
手首を握られて引っ張られたまま、突然の行動がわからなくて、桂は銀時の顔を覗き込む。
何も言わない銀時に連れられて、気が付けば人気がない場所にいる。
「お前あんまり近付くと、何がどうなるかわかんねーぞ。」
「は?」
実に読めない表情で言う。
止めておくべきか、勢いに乗せるべきか?
どうだってもう知らねーよ、とりあえずちょっとだけ・・・
この火をお前に慰めて貰おうか。
慰めるだと何かエロいけど。諫めるくらいにしとくけど。
片手は手首を握ったままで。もう片方は桂の横顔を撫でる。
「!?・・・・・銀時何を・・・。」
「この雰囲気でわかんねーなら、バカの上に鈍感なワケ。」
「誰がバカで鈍感だ。・・・何なんだ、何かあるならはっきりと言え!」
「言ってもいいのか。」
煮詰まった様な瞳を覗き込んで、桂は切なげな顔を見せる。
「何でお前がそんな顔するんだよ・・・。切ないの俺なんだけど。」
「切ない・・・のか。」
「そりゃあもう。」
「・・・・・何でも聞いてやるから、言え。」
真っ直ぐな瞳で返してくる、桂。
「言ったな、何でもって。」
「ああ、言え。」
「じゃあ、言うけど。」
「ん。」

「お前が欲しい。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」
意味が、わからないのが2秒、銀時のマジ視線で気付いて3秒。
「ん・・・?ま、待て、そそそそそそそそそれはそういう意味か?!」

「そういう意味に決まってんだろバーカ!」
握っていた腕を引っ張って引き寄せて。
とりあえず唇くらいで許してやるよ。
・・・あ、意外と大人しくしてるから、もっと深くてもOK?
お、可愛い反応しやがる。
息つく暇もないほど、誰も数えてないけど、「秒」越えて「分」になるまで。
ヅラの赤面ヅラ見る楽しみもあるし。

「こんなことしたくて、そんなだったのか。」
解放された桂の、紅い顔。
「そーだよ、昨日からそりゃー切なくてもう。
ま、ごちそーさま。」
「何がごちそうさまだ、・・・・・さ、最初から言え!べ、別に付き合わないわけじゃないぞ、その、
別に嫌じゃないぞ・・・・・っていやその別に・・・。」
しどろもどろで、真剣に返してくるのが、ちょっと、愛おしい。
かわいーじゃねーの。
最初から言えだって。
強引に引っ張ってきて、よかったんじゃね?
とりあえず、まだ昼間なんで、このくらいで許してやろう。
ま、火が余計に広がって、炎になるかも、しれない。

おしまい。



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何か誕生祝いがどーにも、不完全燃焼的な濁し方して、ほのぼのと終わらせちゃったので
お祝いなんだから・・・ねえ。と思ったので続き。
桂と真選組に挟まれてる銀さんて、何か大変だよなあという、解釈で書いてます。
っていうか、出来上がってなかった銀桂だな・・・。

もどる。