とーぴーくんとなかまたち〜ヒーリングプリンセス〜・ショートストーリー

春のフェスタ・夕暮れの桜



堂戸羅良

神龍町に春が来たら、神龍神社の春祭りがやってくる。
俺は、この春のフェスタが大好きなんだ!
音だけの花火が上がったら、授業なんて聞いてられないよ。
里奈子先生の授業は勉強嫌いの俺でも、解りやすくて好き。
でも、今日は上の空。
シャーペンも俺の手の中で上の空みたいで、指でふらふらと遊ばされて、
ノートに文字じゃなくて、かすった様なへろへろした線のあとをつけてる。
てんてんと、つつかれたノートにシャー芯の黒が跡を付けてばかりで。
わたあめ、今日は何の絵のがいいかなー・・・とか
神社でふるまわれるおてまえが美味しいんだよなあとか
フリーマーケットで面白いもの何かあるかなとか
金魚釣りとか、くじとか、たこ焼きとか・・・
神社にお参りして、何をお願いしようかなとか。
お祭りのことばっかり考えて、授業なんて早く終わらないかなって思っちゃって。
そんな風な俺を、後ろからつついて「こら」って小声で注意してくるのは
俺の後ろの席の勇也。
うるせえな。俺の心はもう、お祭りの賑やかなところへ行っちまってんだから。
神龍神社の春祭り。町中がフェスタ。
春祭りの3日間、昔は夜店があったり、園芸市があったりする、古風なものだったけど
最近になって、フリーマーケットとか、色々と面白いものが増えてきて、
もう、町中花盛りだな。
そんな店とかを見て回って、桜の花びらがまじってる神社のじゃり道を歩いて・・・。
神龍町はお祭り好きで、季節ごとにお祭りやるけど、何か、春祭りは特別、
心がうきうきするんだよな。
給食時間になったら、いつもの顔ぶれに、お祭り行こうぜって・・・
誘わなくても、きっとみんな、一緒に歩くこと、考えてるかな。
小学生のときから、こうやって、授業ほっぽりだした頭で、お祭りのことばっかり
考えてるなあ。


とーぴー

給食を食べながら、ぼくたち、お祭りに行こうねって、おはなししてたの。
ららちゃんは、給食食べることよりも、お祭りに早く行きたくてしかたないみたい。
ぼくたちね、学校が終わったら、神社で待ち合わせしてね、ららちゃんと、勇也君と、
亮君とコースケ君と、一緒にお祭りを歩くの。
楽しみだなあ。
今日の給食ね、春祭りだからなのかな。いつもとちょっぴり違うんだよ。
和菓子がついてきたりね、にんじんがお花のかたちしてるの。
なんだかうれしいな。



桐山勇也

神社の中の、お清めをする水がある場所で、待ち合わせをしています。
一番乗りで来ていた羅良は、俺に向かって、第一声が「おせえよ!」でした。
その次は、「剣谷と三田は?とーぴーは?まだ来ねーの?早くあっちこっち行きたいのに〜!」
何時何分にここで、とかいうのではなくて、一度帰ってからここで待ち合わせ。
羅良はきっと、帰ったらすぐ鞄を放り投げて、適当にぱっぱと着替えて飛び出してきたのだろうな。
シャツのボタンをかけ間違えているもんな。
ボタンを直しながら、「どっから攻めるかな!?」なんて言っている。
人混みの中を、器用にかいくぐって走っていって、はぐれそうになる。
そんなことを、毎年毎年、季節ごとのお祭りでの羅良のいつものパターン。
なんとなく集まった俺達は、なんとなくいつも一緒で。
まさか十二龍なんていう運命のつながりなんてのがあるなんて、知らないうちから、
「なんとなくいつものメンバー」になっていた。
そう、そのメンバーがなかなか来ないものだから、羅良は文句を言いながら
ケータイのカメラで桜の木や神社のたたずまいを撮影して遊んでいる。
俺はそんな、ケータイなんて持ってないから、中学生でそんなものを持ってるのって
どれだけいるんだろうかと、ふと思ったけれど。持ってるやつは持ってるんだよな。
神龍神社は広いんです。俺はどちらかというと、賑やかな人混みを作る夜店とかよりは、
神社の敷地内を散歩したりして、お祭りだからと開かれた、
いつもは見られない神社の中を見てみたりするほうがいいかなと思います。


三田コースケ

早く行かないと、堂戸が「遅ぇ!」とか言って待ってるんだろうな。
でも、困ったなあ・・・。
妹の蓮菜が、友達とはぐれちゃったんだって、半分泣いてるのと偶然会っちゃって。
蓮菜は小学二年で、おれより学校終わるの早いから、友達と一緒に
出店の通りを歩いてたらしいんだけど。
偶然会えてよかったかもしれないけど、どうしようかな・・・。
蓮菜は何か情けない顔してて、ほっとくわけにいかないよなあ。
一緒にいた友達も、蓮菜を探してるかなー・・・。
「蓮菜、どこではぐれた?」
「んと、フリマに行こうって言ってたの。その途中で気がついたらひとりだったの。」
そっか。
「兄ちゃん、フリマやってる神社の方で友達と待ち合わせてるからな、
一緒に来いよ。そしたらフリマで会えるかもしれないからさ。」
「うん・・・。ごめんねお兄ちゃん。」
偶然会えるといいなーと思いながら、待ち合わせ場所まで歩いて、
んーと、どっかで蓮菜の友達がいないか見ながら歩こうっと。


剣谷亮

お祭りに行くからって言ったら、うちの母親、ついでに買い物をしてこいって言う。
別にそんなに、ガキんときみたいに、命の短いおもちゃを両手いっぱいにしようとは思ってないけど、
お祭り歩いた後に、スーパー寄って、何だ、牛乳と、チラシに載ってた特売の上白糖?
あと何だ、渡されたメモにはずいぶんとまあ・・・。
俺は早くきりあげて、特売品が無くならないうちにスーパーに寄らないといけないんかいな。
でも、買ってこないと、今日の夕食が寂しいものになるとか脅すから。
明日お祭り祝いで焼くピッツアの材料も買ってこいとか言うから。
あーぁ、俺はいい息子だね。まったく・・・。
ま、祭りは今日だけじゃないし、いいか。
それより、早く神社行かないと。
バカみたいに早々と待ってる奴がいそうだからなー。



紫多藤乃

学校帰り、制服のまま。
女の子友達数人で、春祭りの賑わいの中を歩いています。
今回のフリマでは、近所のお姉さんが出店しているんですって。
美味しいクッキーなんかを、可愛いラッピングで売っているんですって。
想像しただけで、なんだか楽しいわ。
だから、フリマに向かって歩いています。
そうしたら、三田君が・・・。
密かにときめきながら、思い切って声をかけたの。
そうしたら、妹さんが迷子なのですって・・・。
一緒に探そうって、フリマ方面へ歩きます。
三田君の妹さん、大きな瞳を潤ませてる。やっぱり兄妹ね、三田君に似ているわ。
可愛いな。私も、このくらいの時って、こんなに小さかったのよね。
二年生。ちょっと前まで、一年生だったのよね。
私も、中学生になったばかりだけれど。
中学生になってはじめての春祭り。
そんな日を、三田君と歩いてるなんて、何だか嬉しい。
なんとなく、蓮菜ちゃんに感謝してしまう私。蓮菜ちゃんは困ってるのに、私ったら。


本城陸

キャニスと連れだって、学校帰りは春祭りを横切る。
キャニスは、神龍の春祭りははじめてだね。
途中で三田君らしき姿と、藤乃ちゃんらしき姿を見かけて。
声はかけなかったけど。一緒に歩いてるなんて、どうしたのかと思ったけど、
周りにはお邪魔虫がいるみたいで。
まあ、三田君はこれから羅良君達とおちあうんだろうし。
よく見たら妹の蓮菜ちゃんもいるし。
キャニスが神社に寄りたいって言うから、寄り道して、神社へ向かってた僕ら。
神社のあたりで、一年生か二年生かってくらいの女の子達が、何だかお困りの様子で、
「蓮菜」と聞こえたものだから、三田君の妹のクラスメイトかなと、思った。
そしたら聞こえてきた声、蓮菜ちゃんを探してるらしくて。
そう来たら、何か、どういうことなのか、なんとなく頭の中でつながった。
さて、どうしようか。両方見かけても、どうやって引き合わせよう。
「どうするかな」
キャニスにふってみる。
「コースケは羅良達と神社で待ち合わせてるのよ、たしか。」
そうなったら、どうするかは、決まってるね。お節介を焼いてみようか。



剣谷亮

「何、コースケ、まだ来ないのか?」
堂戸と桐山と、とーぴーは来てたけど、コースケのヤツはまだ来てない。
一緒じゃなかったのかと言われたけど、一緒じゃなかったんですよ、はい。
なにやってんだろう。俺はなにやら、うちの母親から色々言われてたもんで、
俺が一番遅くなったかと思ってた。コースケの家に寄ってみたけど、もう出てったと言うから、
俺は遅刻かー?とか思って来たんだけどな。
いらいらしてる堂戸。夕暮れが近い空。
俺はとりあえず、特売上白糖が無くなったらどうするかなとか、
どうでもいいことを考えてみたりしながら、
でも、待ち合わせにおいてはルーズさの無いコースケが、こんなに来ないのはどうしたのか。
家は俺より早く出てんのにな。
まさかひとりで魔物と戦ってたりしてないだろうな・・・。
などと思ったけど、魔物の餌、癒しの姫がここにいるのに、それは無いなと考え改めてみる。
俺達は顔を見合わせる。
そしたら、後ろから、聞き慣れた声がした。本城とキャニスが、お子様を数人引き連れてるよ。
何なんだ?と、俺達は4人してきょとん・・・と。多分、してた。
聞いてみたら、なんだか、蓮菜が迷子だとかいう。
はーぁ、なるほどね。



三田コースケ

神社の中まで来てみた。申し訳なさそうに、心細そうにしてる蓮菜の手をにぎって、
おれはどうしようかと思ってた。
空が、赤くなってきちゃって。暮れかけてきちゃって。
待ってるだろうな。あいつら待ってるもん、絶対。
「来ないから行こう」なんてことは無いんだよ。
堂戸なんて、あんだけ楽しみにしてて、きっといらいらしてる。
でも、蓮菜、ほっとけないし。紫多は、蓮菜を預かってくれるって、
おれに待ち合わせ場所に行っていいって言ってくれてるけど、
何か、できないよ。そんなこと。おれ、一応兄さんだから。
ちっちゃい妹、預けて行けないもん。
「いいお兄さんね。」
紫多はそう言ってくれた。そっかなあ。
「一緒に、待ち合わせ場所へ行きましょう?堂戸君達にも、事情を言ったらいいと思うの。」
いいやつなのは、紫多だなあ。
「なんか、悪いね。」
いいのよって、付き合ってくれてる紫多。優しいな。やっぱ、堂戸より紫多の方が、
癒しの姫とかいうのに、合ってる気がするけどなー。
蓮菜、申し訳なさそうに、下向いて歩いてる。手はおれの手をきゅっとにぎってる。



桐山勇也

待つこと、数十分。ついさっきまでいらいらしてた羅良も、今は心配そうにして、
困ってどうしたらいいか解らないといった風の小学2年生達をなぐさめている。
中には、「蓮菜が迷子になったりして、お祭りが見れないよー」って、薄情気味な子もいるけれど、
その子には優しげに叱咤している。以外と羅良は世話好きな面がある。
困ってる人を放っておけないところがある。
「こういうとき、ケータイがあったら便利だろうなあ。」
剣谷もどうしたものかと、羅良の手の文明の利器を見ていた。
多分、ここで待っていれば、いいように思える。
でも、只々時間が過ぎて、ただ待っているだけ。
俺自身、いい考えも浮かばなくて、困ってるこの子達をなぐさめるだけで。
なんとなく、自分がいざというとき、頼りになれない。そんな風に思います。
俺は大人びていると言われる。でも、何かこうして何気ない困ったことが起こっても、
結局なんにもできてないよ。



とーぴー

まってたの。うろうろしてたら、余計に会えないからって。
ぼくね、こういう、みんなの優しいところが大好きです。
みんなは、一緒にこうやって、小学2年生の子達と一緒にいて、
あんなにお祭りを楽しみにしてたのに、こうしてるから。
コースケ君もきっと、困ってる。
でもね、きっとみんな、怒ったりしないよ。
こうやって待ってたら、蓮菜ちゃんとコースケ君とも会えて、よかったねって、
みんな、笑うね。
そう思うから、今日、ぼくはね、みんながもっと好きになりました。
そんなことを、思ってたらね、コースケ君達が来たの。


堂戸羅良

「ごめーん・・・。」
三田の第一声。
「はすなぁ〜!!」「なにしてたの〜もぉー。」
わいわいと、ほっとしたような顔のちびっ子達は、もじもじしたり、
早く祭り見物に行きたいのが見え見えだったり、
照れながら「ありがとう」って、日の暮れかけたフリマへ走ってったよ。
フリマはそろそろしまっちまうな。
「何か、ごめんな。遊んでてよかったのに・・・。」
三田はすまなそうにそう言ってた。特に、俺のことを気にしてるらしくて。
「別にいいって。明日もあさってもあるしさあ
・・・な、見てみろよ、お陰でこんなのが見れたぜ?」
俺がそう言って指差したのは、人気の少なくなった夕暮れの神社の、
桜並木と夕日の、何か凄い綺麗なコントラスト。
「こんなの、見たことなかったな。このさ、この角度から見ると、すげぇぜ!?」


桐山勇也

俺達は言葉をなくすほど、その微妙な色合いと、陰と光のコントラストの生む、
桜と夕日の美しさに見入っていた。
桜は陰だけで、影絵にたとえるといいだろうか。今日の夕日はまた、
色合いがなんともいえなくて、
風格のある神社の建物も加わって、なんともいえない、
写真に撮っても伝わらないであろうという、今だけの眩しさを放ち表現していました。
「な・・・、すごいよな。・・・わっ・・・」
突然吹いた風に、なびいた羅良の髪。その姿が、その絶妙な美しさにまた、
加わったのを、俺達は見ていました。
羅良にだけ、それは見ることができない。
見入ってしまったのは、俺だけだろうか。
「なんだか・・・堂戸君も・・・綺麗。」
紫多が、そう、ため息をつくように、言っていた。



キャニス・ファウラー

夕日が落ちるまで、ずっと、見ていたわ。
「何か目がヘンだぁ〜・・・。」
羅良は目をしばしばさせていたわ。まあ、そうでしょうね。あたしもよ。
明日、本祭りなんですって。学校も、郷土の日とかで、午前で終わるのだそうよ。
「明日、みんなで本祭り三昧しよーぜ!」
目をこすりながら、羅良はそう言ったかと思ったら、わたあめの夜店へかけていったわ。
亮は、何だか、お使いを仰せつかってるとかで、「砂糖あるかなー」なんて
言っているけれど。
頼りなくて、戦い馴れていなくて、バカばっかりな奴らと、あたしは時々、
バカにしているわね。
でも、今日みたいな日は、なんだか、思っちゃうわ。
何だか、みんな良い子ばかりね。あたしとは、違うわね。
口には、出さないわ。でも、今日は強く思った。
あんた達、何だか、大好きかも、しれないわ・・・・・。


おしまい。


あとがき。

少し前から頭にあったお話です。なんとなく、書いてみました。
何気ない情緒みたいなものを書いたかなと思うんですが。
所々ヘンなんだけど・・・。オリキャラ部屋見てないと設定
わかんないだろって所がなんだかすいません。
ちょっと、故郷の町のお祭りと、北海道神宮祭がイメージで
頭というか、心にありました。
何か羅良は幸せ者だねえ。(笑)
なんとなく要所要所は頭にあったので、文章にしてつなぐだけだった
んですけど、なんとなく書いていったらこういうものになりました。
アップしようかどうしようか、迷いつつ、アップしてみますー。
リレー形式一人称。解り辛かったらすいません。
あえて絵は入れませんでした。
春のうちに、アップしないと季節はずれになってしまうわー。
よかったら感想教えて下さいね。どきどき。

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