オレとお前がいればクレイモランの雪も氷もとけるくらいアツいんだぜ!


オレ・・・カミュっていいます。ちょっと記憶がなくて、なんていうかその、すいません。
イレブンさんの仲間として、みなさんと旅してますけど、オレ、全然役立たずだし、でもみなさん優しくて、特にイレブンさんが優しくて・・・可愛くてたまらない。
あああ、オレなんかが勇者のこんなに可愛くて優しくて綺麗なイレブンさんの事、好きで、好きでもいいんだろうか・・・とさえ思ってしまう。
みなさんが、言うには。

「アナタたち、ラブラブだったのよ?仲が良すぎてヤケちゃうくらいにね、そう、毎晩のように・・・って、なんでもないわ。」
って、シルビアさん。毎晩のように?!

「本当に、女の入る余地なんて一欠片もないくらい仲が良くて、私とロウさまが仲間になったときには、既に夫婦みたいな阿吽の呼吸っていうのかしら・・・」
マルティナさんもそう言ってて。

「お主も早く記憶を取り戻さんと、調子が狂うわい。イレブンにとって、お主はかけがえのない存在じゃからな、恋人がそんなじゃあのう、いや、お主が今精一杯なのはわかっておるよ。」
あああロウさんごめんなさい!ってかけがえのない恋人・・・。

「イレブンはお前の事ばかり、嬉しそうに語っていたぞ。早く会いたいと、どこにいるのかとな。」
グレイグさん、ごめんなさいオレ、正直あなたがイレブンさんと二人でしばらく旅してたと聞いて、嫉妬しました・・・。


オレとイレブンさんは恋人だって、すごくアツい仲だって言うんだ、でもオレには記憶がなくて。ただ、イレブンさんが好きで、オレなんて何にも出来ないのに守りたくて、ああ、どうしてあなたはそんなに素敵なんですか、そんなに可愛くて優しいんですか、イレブンさん・・・
そのサラサラの綺麗な髪に、やわらかな笑顔に、オレを心配そうに見つめるあなたに、触れたくても出来ない今のオレは、さぞ情けないんでしょうね、ううう。


船、オレがたまたま飢餓状態で忍び込んだシルビア号で、オレを見たイレブンさんはすごく嬉しそうで、でもその意味がわからずに、盗み食いした事を謝罪することばかりだったオレ。
いてくれるだけで嬉しいよって、無事でよかったって、信じてたって。
ああ、ごめんなさい、何にもわからない。ただ、イレブンさんのことだけ、ものすごく好きなのだけはわかる。
食べてしまいたいくらい大好きなのだけは、わかる。わ、ごめんなさい!

そのシルビア号は、寒い地域にやってきた、クレイモランというところ、らしいです。
クレイモラン・・・なんだろう、モヤモヤとして、何か引っかかるような心持ちが、怖い。

「どうしたのカミュ、顔色が良くないよ?」

「イレブンさん!あ、いえ、何でもないんです、大丈夫ですよ。」

イレブンさんの、優しくて可愛らしくさえあるその、心配げな笑顔を見たら、別の思いが頭を巡って来る。
オレとこの人が、この可愛くて優しくて綺麗で芯の強い素敵な人が、オレと恋人だっていうんなら、いうのなら!

「あの、イレブンさん・・・これだけは、わかるんです。オレ・・・イレブンさんが好きだって・・・!あああ、あの、本当にそれだけはわかるんです!」

「カミュ・・・」

「これだけは何があっても、忘れたり消えたりしないと思うんです、いちばん強くオレの中にあること、なんです。」

思い切ってイレブンさんにそう告げると、イレブンさんはふわりとした微笑みをくれて・・・
あああ、欲しい、欲しくなる。あなたが。

「あの、嫌じゃなかったら・・・き、キス、しても、いいですか?」
恋人だっていうんなら、そのくらい、今の自分でも、していいですよね?
オレは今はこんなで、きっとイレブンさんだって強くて頼り甲斐あった、カッコよかったらしいオレがいいだろうとわかってる。
甘えても、いいですか、あなたの優しさに、『カミュ』が好きなあなたの愛に・・・

「嫌なわけないじゃない。えへへ、久しぶりだな、カミュとのキス・・・」

イレブンさんは、頬染めて照れちゃって・・・ああ、可愛い!この人とキス出来るなんて夢みたいだ!

してくれる?と、オレを抱き寄せるみたいに側に来てくれるイレブンさんに、オレはおそるおそるくちづける。ああ、あああ・・・柔らかな唇、ふんわりとした優しい匂い、サラサラで柔らかくハリのある綺麗な髪の触り心地・・・オレは天に舞い上がったかのようだった。

「この感じ・・・カミュの、唇・・・」

ぽわんとしたような、イレブンさんが可愛い。たまらなく。
でも、わかりますよ、あなたが求めてるのは、あなたを忘れていない、今のオレじゃない、頼りになるクールなカミュなんでしょう。
これ以上しちゃ、いけない気がする、本当は叶うなら、記憶があった頃にそうだったらしい、夜の寝所を共にすることまで、出来たらどんなにいいか。でも、ダメです、心の奥で、2つの心が叫ぶ、したい、好きだと叫ぶ心と、ダメだというよくわからない本能が。

どっちも、あなたが好きだからです、イレブンさん。


☆ ☆ ☆


記憶を取り戻した。
イレブンのおかげでな。何かやけに情けない姿を晒していたような気はおぼろげにあるけどな、何故かほとんど覚えてねえ、ただ、イレブンの事ばかり思ってたような気はする。
みんなして言いやがる、別人みたいで調子が狂ったとか、えらく気弱で心配だったとか・・・
うっわ、それは思い出さなくていいのかも知れねぇ・・・
それをイレブンに見せてたと思うとなあ、かっこわりーったらねえぜ。
勇者の力ってのは不思議なもんだ、オレがお前のいるところに転がりこんだのも、偶然じゃねえのかも、知れねーな。
勇者の不思議な力もあってオレは記憶を取り戻せたが、オレ達はやっぱりな、引き寄せられる何かがあるんだよ、自惚れなんかじゃなく、何かあると思っていいか、相棒。

「行くぜ相棒!」

「うん!カミュ!」

オレ達は、黄金の城を駆け抜ける。少々めんどくせえ作りだが。
オレはこれを、恐れ、逃げていた。
妹マヤを取り戻す。イレブンがいなかったら、オレだけならどうにも出来なかったな。
オレは正直、過ちを犯して自暴自棄にもなった、けど無駄じゃなかった気がするのはイレブンがいたからだ、ちょっとカミサマってのを信じてもいい気がしてきたぜ。
お前と進む道なら、どんなでも進めるし、運命とかいうものより、オレとお前は強くつながってんだ。
マヤは大丈夫みてぇだ、教会で預かってみてくれるって言ってもらえて安心した。
それなら、道はやっぱりひとつだ。もう迷わねぇ!

「本当によかった、ね、カミュ。」
イレブンの屈託のない、優しい笑顔を久しぶりに見た気がした。
やっぱり可愛いなお前は。
オレは、イレブンとの絆を確認するように、なんだか清々しい気分で、心から相棒と呼んだ。
よろしく頼むぜ、相棒!

その夜は祝も兼ねての、久しぶりの晩餐っていうか呑んでた。
いつの間にか、居辛かったクレイモランの空気も柔らかくなってさ、いや、北国だから空気はピンとしてるんだけどよ、柔らかくなって感じた。

ふにゃ

イレブンの柔らかい頬が、オレに寄りかかってきた。
酔って半分寝てやがんのな。
その顔があんまりに可愛くて、ふにって頬をつついてやった。

「かみゅぅ・・・」

そ、そんな声出すなよ・・・
オレ以外に聞かせたくねえよ、そんな声・・・
呼び覚まされちまうだろ、そうだよ、何日、再会してから結構経つってのに、何にもしてねーよ!

「イレブンちゃん、やっと安心したのね、ウフフ。カミュちゃん、介抱してあげなさいよ、二人っきりになりたいでしょ?」

こ、このシルビアのおっさんは相変わらず、物分りが変に良すぎるぜ。

「こんな安心しきったような、ふにゃふにゃなイレブンは初めて見るな。カミュ、お前といるとこうなる訳か。」

「そうよお、グレイグ、カミュちゃんとイレブンちゃんはなんたってラブラブだものね〜」

まあな、っていうかグレイグ、あんまイレブンのこの顔見てんじゃねえ、こういうの見ていいのはオレだけなんだよ!

介抱、というか。シルビアは久しぶりにお楽しみなさいな、なーんて耳打ちしてきやがる。



オレはふにゃりとして酔いが覚めないイレブンを支えながら、クレイモランの宿の、オレとイレブンが泊まる二人部屋に辿り着く。
部屋について、イレブンをベッドに横たわらせて、紫の上着の金具を解いて。
久しぶりにやってる慣れた作業、楽にさせて寝かせようと思ったんだが・・・
イレブンがオレの首に腕を回してきた。

「カミュぅ〜・・・」

か、可愛い高い声出しやがって・・・うわずったような甘い声が、オレの欲望を呼び覚ましそうになる。
再会してから、なんにもしてねーし!なぜだか記憶がなかった間のことはほとんど覚えてないが、イレブンとキスした記憶はあるんだけどな・・・
うっすら程度過ぎてなんにもしてねーのと変わらねえ!いや、したんだが、感触がなんとなく残ってるから。
イレブンはといえば俺に抱きついて、べったりくっついてる。可愛い奴め。

「かみゅ・・・あのね、好き・・・」

「ああ、俺もだぜ、イレブン。」

甘ったるい声で、潤んだ瞳で、何かを訴えるように。その姿があんまりに可愛すぎて、愛おしすぎて、オレもイレブンの、細い体を抱きしめる。なんだか少しだけたくましくなった感じもしたが、相変わらずの抱き心地は柔らかくて気持ちよくて、ずいぶんな思いを抱えたようだってのに、そのサラサラな艶髪は痛みを知らない綺麗なままで、ふんわりとした匂いも相変わらず心地よくて、甘い。
ああ、お前がいる。オレもいる。

「カミュ、キスしたの、覚えてないよね」

「あ、いや、それはちょっと覚えてんだ。感触が。」

「そうなの?!なら、嬉しいな。・・・ねえ?」

「うん?」

「シて?・・・抱いて、カミュ・・・もう待てないよお!」

「イレブン・・・!オレもすごく、シてぇ、忘れられない夜にしような。」

カーテンしめて、と恥ずかしがるイレブン、はにかみながらシてなんて言うイレブン、深海の青みたいな瞳はうるうるしてて、もう可愛いったらねぇ!
思いは同じだな、相棒。
カーテンをしめるために立つと、窓からクレイモランの夜の街並みが見える。
街の真ん中の星の中心のモニュメントが見える。

「カミュの故郷で愛しあえるの、なんか嬉しい・・・」

「可愛いな、マジで。オレたちの愛と愛欲で、街の雪も氷も解かすくらい・・・アツくなろうぜ、イレブン。離さねえからな!」

「うん、今日のカミュは、前みたいなあの、激しい狼さんなカミュなんだね♡」

「あどけない笑顔でエロい事言うじゃねーか。激しいのが好きなイレブン?」

優しくしてと、口では言う、激しいのが好きなくせにな。
久しぶりに何回イカせてやろうかと思いながら、オレはイレブンの衣服を引っ剥がしていった。


離さねえ、イレブン。
イレブンの待ちきれなさ気な唇に深くくちづけると、イレブンも応えて絡めてくる。
雪をも解かす熱は、もう離さないとばかりに。
もし、またオレたちが離れてしまうことがあったとしても、必ずまた引き合うんだ、絶対。





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