君は僕の青空なんだから




僕、イレブン。一応勇者。旅の途中で助けてくれたカミュと一緒に、旅をしてホムラの里まで辿り着いたところ。
ああ、汗ばんでホコリや土まみれで、気持ち悪い。旅はカミュのおかげでなんとか、手探りだけど、ピンチも何度かあったけど、こうして人里まで辿り着けたから本当にカミュには感謝してるんだ。
それにしても、旅って大変だね、こんなにお風呂に入ってないなんて初めてじゃないかな。

と思ってたら、ホムラのお風呂屋さんが、声を掛けてくれた。
カミュも、いつまた風呂に入れるかわからないから、入っとくか?って。
そうだよね、僕もきれいにしたいよ、土ぼこりとかなんかもう、めちゃくちゃだもの。
とか思った矢先に、カミュが、「ニオうか?」なんて言うから、思わず匂いを気にしてしまった、って!
か、カミュの匂いがする・・・!
なんか、変な言い方だけど、いい匂いがする。わわわわわ!
男のいい匂い?!僕は恥ずかしさと混乱と、誘われてしまいそうな感覚にクラクラした。
それに、思えばカミュと一緒にお風呂だなんて、なんだか恥ずかしくなる、男同士だけど、だって、僕は・・・
カミュが、好きなんだもの。
好きな人と、叶わない恋の相手の人と、一緒に入浴するなんて、気恥ずかしいし照れくさいし、意識しちゃうし、絶対。
気がついたら僕は自分の顔を覆って、全身で恥ずかしがり屋をアピールしてるみたいになっていた。
僕がそうやって一人でワタワタしてたら、カミュは先に行ってるって、お風呂屋さんの呼び込みの人に連れられて行ってしまった。
あ、僕を置いて行かないでよ〜!
ハア、まあ、僕も落ち着こう、っていうか。カミュの匂い、好きかもしれない・・・
あああ、僕って変?カミュは僕のこと、優しくしてくれるし、頼りになるカミュがいないとここまで来られなかったし、それなりに戦えるつもりだけど、まだ魔物と対峙するのには勇気がいる。
そんな頼りない僕を、導いて手を引いてくれて。本当カミュってかっこいい。
まだ、知らないことだらけだし、なんか、肝心なところで自分のこと言わないなとは思うけど、でも、でも・・・
カミュが、好き、大好き。真っ暗な洞窟や地下から、射してきた青空の光いっぱいの、希望をくれる、こんな僕の手を笑顔で引いてくれる、カミュが、大好き!
君は、僕の青空そのもの。
青い髪と瞳が、そのすべてが、僕には眩しいくらい、青空みたいで。
まだ、わからない気持ちがたくさん、僕の中にあるけど、本当に、好き。
女の人に誘われてる姿を見たら嫉妬心にかられてしまうし、僕にはできないのに。
まあ、カミュはモテるけどその手の女性は適当にあしらって帰してくれるから、心配ないけど、僕は誘うことすらできないから、色々ヤキモチです。

僕は、町の中を散策しながらお風呂屋さんを探してた。
途中まあ、ちょこちょこと色々あったけど、カミュに追いてかれたのが寂しいから、照れるけどお風呂屋さんに向かうことにした。男同士なのだから、恥ずかしいことない筈なのに、相手がカミュだと思うとすごく恥ずかしい。だって、好きな人とお風呂だよ?

「来たな」
僕が意を決して来たお風呂屋さんは、裸じゃなくて浴衣の服を着て入る、蒸し風呂だった。
そういえばお風呂屋さんもそう言ってたような、人の話はちゃんと聞こう。
これなら、恥ずかしいことない?そうでもない?
カミュが言うには、というか見たらわかるけど、貸し切りみたいな二人きりになってた。
いつもみたいに、カミュの隣に座った僕だけど、内心ドキドキしてる。
カミュは普段からラフな服装だけど、浴用の服装のカミュは引き締まった筋肉が、なんだか見え隠れして腕とかまで引き締まってて、鍛えたのかな、カッコイイって口に出してしまった。
カミュはいつもクールで、動じないし、そうか?ってクールに返してくるし。
ああもう、男の僕でもそう思うんだから、女の人にモテるの当然だよね、カッコイイ。
田舎から出てきたばかりの、冴えない僕とは大違いだよね、僕が自慢できるのなんて、髪がサラサラなことくらいだよ。
こんな、田舎者で頼りない同性に、カミュがこれ以上の目を向けてくれる、訳なんてないの、わかってる。
せめて、この関係は壊さないように、僕の思いなんて、隠しておかなきゃ・・・。

と、思ってたのに。
迷子を拾ってしまったの、ルコちゃんっていうの、最初は妹を探してるっていう赤い服の女の子、ベロニカの家族かと思ったのに違うって。
赤い服の魔法使いベロニカに、セーニャって本当の妹さんを探すから手伝ってと言われて。
ルコちゃんは酒場に預かってもらえることになったからいいけど、そのルコちゃんが、
酒場に様子を見に来た時に、耳打ちしてきて。
「あのね、カミュお兄ちゃん、イレブンお兄ちゃんのこと好き?って聞いたらね、ああ、好きだよって言ってたよ!よかったね。」
僕の心臓は飛び出すかと思いました。
けど、そんな期待しちゃった意味なわけ、ないじゃない!
ルコちゃんに聞かれたら、僕でもそう答えるよ。
でも、友達とか仲間の意味でも、カミュが好きだよって言ってくれたなら、すごく、嬉しい。
ルコちゃんに、お返事を促されてしまったので、
「うん、僕もカミュが大好きだよ。」
って言ってしまった!本当の気持ちだけど、そうは伝わらないよね、カミュと同じ意味になるよね。
ルコちゃん、カミュに僕が大好きって言ったの伝えてくれちゃったけど、カミュはやっぱり、動じない、クールに、ありがとよって。
僕だけ心臓バクバクしてて、なんだか、バカみたい。期待したってダメなのにね。


僕たちはなんか、やたら落とし穴の多い、敵の巣窟をなんとかクリアして、セーニャ、ベロニカの双子の妹とも会えた。
双賢の姉妹、っていうかどう見てもお姉さんなセーニャと、ベロニカは双子でお姉さんがベロニカ?!
つまり、僕よりお姉さんが二人、仲間になったんだ。
ルコちゃんのお父さんも助けられてよかった、カミュが言うにはすごい情報屋なんだって。
裏の世界では有名だって、そんなことを知ってるカミュがまたかっこよく見えちゃったけど、内緒。

あれ、女の子が、二人、可愛い感じのする綺麗な顔立ちの、性格は正反対な女の子が仲間ってことは、僕はいよいよ、ピンチかも?
カミュは、おしとやかな優しいセーニャと、元気で可愛いベロニカと、どっちのタイプが好きなんだろう・・・
別に今まで、男で不満に思ったことはないし、今も女の子になりたいわけじゃないけど、
なんだか、複雑だよ、でも、僕がたとえ仮に女の子でも、この二人のキラキラした美少女感にはかなわないよね・・・僕、田舎の冴えないおのぼりさんだったし。

宿をとって、カミュと相部屋。二部屋とったんだから、当たり前の部屋割り。相部屋で、夜まで色々語らえるとか、同じ部屋で寝られるとか、嬉しいことが色々なはずなのに、僕の心は複雑に沈んでた。
カミュが心配してくれて、青空の瞳が僕のこと、心配そうに覗き込んで。
そう、カミュは僕の青空で、青い光そのもの。暗闇からでも君がいたら、光に向かって行ける。
太陽みたいに照らして、月みたいに優しくしてくれて、星みたいにどこにいても導いてくれる、青い光そのもの。
青空があれば、僕は進んでいける、頼りすぎてるかも知れないけど、青空そのものだよ。
そんなカミュを、困らせたくない。僕の気持ちなんて、しまっておけばいいだけだ。
なのに、裏腹に変な質問しちゃったり、おしとやかな子と元気な子ならどっちが好きなのかとか
どんな子が好みなのかとか、変な質問して困らせて。
ああもう僕はバカみたい、熱いお風呂の湯で、目を覚まそう!
頭冷やしてくると言ったけど、熱いお風呂の湯じゃ、余計のぼせるかな。


露天風呂で、貸し切りで、ちょうどよかった。
ちょっと落ち着こう、ああでも、心配してくれたの、嬉しかったな、ああ〜好き好き大好き!
想いばかり、つのるのに、どうしたらいいの、こういうの、初めてなんだもの。
初恋は叶わないってやつですか?こんなに大好きなのに、叶わないなんてあんまりだよ。
僕は勇者なのに、こんなに勇気がない、カミュに、あたって砕けることも怖くてできない。
恋って、もしかしたら、戦いの技や呪文覚えることより難解なのかも。
そもそも、男同士なのだから、カミュが僕をそんな目で見てるわけがない!

とか、散々悩んでたら、涙まででちゃって、情けないことこのうえなくて、切なくてたまらない。
そうしてたら、心配してくれてんだね、カミュが探しに来てくれた。
って!待ってー!今度こそ裸だもの、なんで露天風呂にしたの僕は!?
恥ずかしさと、泣き顔見せたくないのとで、青空見られない。

「イレブン、どうした?泣いてたのか?」

カミュ、心配させてごめんね。

「う、なんか、切なくなっちゃって、えへへ・・・」

僕は、多分滑稽な無理やり笑顔を作って、ようやくカミュの方を見る。

「どうしたんだよ、オレはなんか、わりぃこと、言ったか?」

「そんなことないよ、僕が変なだけ。・・・ルコちゃんに、好きだって!って伝えてもらって、嬉しくて、でも、そんな意味なわけ・・・ないのに・・・」

ああもう言わなくていいこと、僕のバカ!
って思った瞬間、か、か、カミュに抱きしめられちゃった!
え?え?!

「オレ、お前が、イレブンが好きだ。そういう意味でだ。ずっと、旅してて一人で悩んでたんだ。」

信じられない言葉が、他でもないカミュから。
ほ、本当に?

「カミュ・・・僕・・・嬉しい、同じだと思っていいの?」

ようやく、発せた言葉で。同じ思い、してたと、いうことなの?

「ああ、好きだぜ、ずっと、お前が可愛く見えて仕方なくてよ。・・・イレブン、ふんわりしたいい匂いがすんな・・・」

か、可愛い?!
カミュが、僕を好きで、可愛いと思ってるの?
あああああ、なんかもういい、大好き・・・溢れる!

「かみゅ・・・大好き・・・!カミュの匂いがするよう・・・ねえ、もう少し、こうしていていい?」

「オレの理性が飛ばなきゃな、どうなっても、知らねえぜ?」

「カミュぅ・・・好きにしていいよ・・・お部屋に戻ってからなら。」


思えばとんでもないこと、言った?
両思いで嬉しくて、もうどうなってもよくて、そのまま抱かれていいって思ったけど
・・・恥ずかしい!!
今、僕は、カミュの下になって寝てる状態で、こここ、これってあの、えっちするっていうことでしょ?
カミュは、僕とし、したかった、の?!
青空のクールで優しい瞳は、熱を帯びて僕を見下ろしてる、た、食べられちゃうの?
あれ、ところで男同士でどうやってするんだろうか、僕そんなこと、知らないよ!

その夜、僕は色々と、知らなかったアツさを知りました。
カミュもそんな経験があるわけじゃないって言ってたけど、優しく大切にしてくれたし、
あ、でも慣れてきてからのカミュはすごく、激しくて、わわわ恥ずかしい。
なんか、思い出すのも恥ずかしいけど、嬉しくて幸せで、アツくて、気持ちよかった。
カミュの、恋人になれただけでもすごい、嬉しすぎてほわほわしちゃうよ!
ただ、ちょっと、腰が立たなくなってるので、あちこち痛いし痕がついててすごいのもあるので、
宿屋さんの布団から出られないんだ、セーニャには不思議そうに心配されちゃうし、ベロニカには、よかったわねって言われちゃうし!
ベロニカって、子供の姿だけど、お姉さんなんだなって思った。
カミュは、やりすぎたかって、大丈夫かって、ひたすら心配してくれて、キスしてくれた。
昨夜何回してもらったかわからないくらい、キスしたけど、はわあ、カミュにキスされちゃうなんて、まだ信じられないよ、嬉しすぎて!

こういうの、両片思いっていうのかな、今日も、僕の青空は眩しくて、頼もしくてカッコイイです。
頼もしいカミュに、並んでいくのに相応しく、勇者としても頑張れる、そんな気持ちで清々しい気持ちでいるよ!

最高の、この上ない人がいてくれるんだから、僕は頑張らなきゃ!


おしまい



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