サンドウィッチ・シチュエーション





第3話 女王の内心ひとかけら


私は天宮りあ。この、エスカレーター式の学校の高等部3年だ。
中等部からエスカレーターなんだ、うちの学校は。
姓が違うからバレちゃあいないが、私はここの理事長の家の長女だ。
ただでさえ私は目立つらしいから、その事は秘密にしている。
期待が大きいとなかなか大変だよ、理事長である祖父は、私に随分期待しているようで、
私が将来理事長になればいいとか、或いはいい婿を迎えてくれればいいとか、そういうのとかさ。
それで私は厳しく育った、おかげさまでやけに目立つほど、強くなりましたよ、うん。
でも、面倒なんだけどな、自由にさせて欲しいと思う。

他人の評価からしても、鏡の向こうのを見てても、まあ見た目は良いだろうさ、美人で背が高くてナイスバディとか言われるし。
まあ、厳しく育ったおかげもあるのか、応えようと頑張りすぎたせいなのか、一見出来のいい、高等部の女王となってしまった。
だけどさ、ありがたい反面、面倒だし疲れる。
学業、スポーツ、部活動、生徒会にいたことも2年のときにはある。
がーんばり、過ぎたのかも。
私はそこまでいい子でも、ない。

その私を、癒してくれるのが、ヒスイなんだ。
北本ヒスイちゃん、1年の可愛い私の大切な、うーん・・・言っていいか、恋人。
あの、元気で努力家な反面、天然でチャーミング過ぎて、もう可愛くて。
あの子が私を唯一癒して満たしてくれる。
まさに、唯一の居場所。
素でいられるし、知ってくれている。
わかってくれる人は誰しも必要だよ。
私が本来どうなのか、結構すぐに見抜いてきてくれて、あの子も悩みとか打ち明けてくれて、だんだん親しくしているうちに、それは愛になってしまって。
女同士で、人には言い難いのも、家が認めないだろう事もあるので、秘密にしているんだけど、
ヒスイとキスしてた時に、よりによって、なんとなくソリのあわないのが目撃していった。腹立つなあ。
海上、男子ではモテにモテる、けど誰にもいい顔すらしない。
ひとまずキツく口止めしたが、ソリのあわないのに弱みを握られたかのようで、気に食わない。
が、あちらはあちらで、誰にも振り向かない理由があったようだ、いたんだよ、おそらく。
いつも、昼を共にしている、背の小さめな可愛らしい男子、確かヒスイとクラスが同じだった、あの1年の子に、少なくない事を思っているのは、見ればわかった。
あの目は友人を見る目じゃない、そこは自分と同じだと思う、可愛くて仕方ないって、恋する瞳を向けてるじゃないか。
誰にも見せないんじゃないだろうか、あんな人懐こい緩んだ笑顔みたいな、デレデレもいいところだった。

まあ、私だってヒスイが大好きだし、素でいられる、多分私もヒスイといるときはデレデレしてるから。
クールビューティー天宮と、呼ばれてはいるが、クールというより熱くなる方だと思う、自信を持てたのは、まあ厳しく育った甲斐があったのか、
応えようと努力してきたからついたのだと思ってる、面倒くさがりなのに世話焼きなのかも知れない、
つい、世話を焼いたり、思ったことを助言してみたりしていた、いつの間にか人の真ん中に立つようになり、頼りにされ、ついには女王と呼ばれる。
積み重なったものだから悪いとは思わない、でも疲れるのは本当なんだ、背伸びしてきた積み重ねでもあるからだと思う。
それを、全部ヒスイは受け止めて癒してくれた。

私だって疲れるし泣くし怒るし、自信がたっぷりあるわけじゃないってこと。
誰も、女王天宮が弱くて背伸びして、それを少し後悔してることなんて、知る由もなくてさ。
ヒスイといるときは楽だし楽しいし、分かり合えるし、許されるならずっと一緒がいい!
可愛い、私にだけ見せる生意気さも、みんな好き、無理しなくていいよって言い合える。
一緒に生きていきたい唯一の子なのに、多分許されない愛なのだよね・・・。



第4話 キューピットになりました?


あたし、北本ヒスイ!趣味はお菓子作り!でも失敗もしちゃうよ。
今日はりあちゃん、あ、天宮りあさんはあたしの大切な大切なラブな人だから、特別に年上だけど、りあちゃんって呼んでるの!
りあちゃんの為に焼いたクッキーなんだけど、ちょっと失敗しちゃったあ~!
きっとりあちゃんは、焦げ気味クッキーでも食べてくれるけど、ダメダメ!
焦げ気味よけたら形がいびつなのとか、割れてるのとかばっかりのこっちゃった。
あ~あ、大好きな人にはいい感じの美味しいの食べてもらいたかったのに、なんで今日は失敗したの、あたしのバカ〜!

りあちゃん、ごめーん、今日は失敗なの。

「ヒスイが作ってくれたクッキーだよ、食べたい!」

ダメダメ、焦げてるのと形がガタガタなのしかないの〜!

「味は美味しいでしょ、食べたいよ、ねえ、ヒスイ、いいよね?」

えーでもぉ

「頑張って私のために焼いてくれたのに、食べられないほうがダメなの!」

もう、りあちゃんったら、仕方ないから、焦げてないのを食べてね?

「やったね、ヒスイのお菓子は美味しいから!どれなら食べていい?」

じゃあね、これならなんとかマシかな、はい、あ~んして?

「あーん、・・・美味しいよ!」

良かったぁ!
りあちゃんが美味しく嬉しく食べてくれるから、失敗してもまた頑張って作りたくなるの!

「ヒスイすごいね、私は料理関係は全く出来ないし、尊敬しちゃうなあ。美味しかった、・・・ちゅ。」

やぁんもう、りあちゃんたら、とけちゃうよぉ。



「あ・・・まただ。」

え?
あー!やだ、また海上先輩に見られてたの!

「なんでそう、こういう時に限って、目撃者が邪魔してくるのか?」

りあちゃん、怖い顔したらダメよぉ

「全くよ、何ではこっちが言いてぇんだよ、人のいるとこでイチャイチャイチャイチャと。」

海上先輩が悪態ついてくるぅ・・・怖いなあ。

「ふん、羨ましいか?」

「なんだとコラ」

「知ってるぞ、海上、君はあの割といつも一緒に昼ごはんしてる子と、こういう感じにしたいんだろう、
それをバラされたくなかったら、一切この私達の事は言うな。」

あ、海上先輩が珍しく、たじろいてる。

「何で知ってんだよ、俺は別に別にべ、ユーキの事なんてなん・・・」

ユーキ?ああ!うちのクラスの一番小さい、河合君!
そうだよね、なんかいっつも、見かけるよね、一緒におにぎりとサンドウィッチ食べてるよね。

「河合君の名前は出してなかったのに、バカだね海上、墓穴掘ったね、図星というわけね。」

あ、海上先輩なんか悔しそう。
何か仲が悪いのは、なんでなのかなあ、似てるのかも、りあちゃんと海上先輩。
海上先輩は、頭を掻きながら、しばらく黙ってたけど。

「バレてんなら仕方ねえや、秘密には引き続きしといてやる、その代わり」

りあちゃん、怖い顔のまんま、もう。
交換条件がくるの?なになに?

「俺とユーキ・・・河合が上手くいい事になれるように、力を貸せよ。」



海上先輩は、意外な交換条件を出してきて、意外にもりあちゃんも、協力するの同意したわ!
わああ、キューピット役なの?あたし達。
でも、わからないようにして欲しいって言うの。
それは、あたしはわかるかな、河合君は結構、りあちゃんを見てること多い気がするから、もしかしたらって思う。たまに視線は感じてたの。
うまく行くコツとか助言が欲しかったみたいなのに、りあちゃんはキューピット買って出ちゃった!
もう、こういうときは大人気ないんだから、仕方ないなあ。

あたしがキューピットします、だからりあちゃんは何もしなくて良いよ!

「北本、確か河合と同じクラスだもんな、お前の方が頼みやすい、天宮は何もすんな。秘密にはしといてやる、俺のことも言うんじゃねーぞ。」


と、いうわけで、北本ヒスイ、今日から突然、河合君を海上先輩に振り向かせる?
みたいな恋のキューピットになりました。
あたしが一番関係ないから、それでいいよね、あたしもなんとなく、海上先輩の応援したくなっちゃった。
そんなことしたことないけど、なんとかなるといいな!








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2024/02/29